1月27日に一時、1000円近い下げを演じ、日経平均株価は2万6044円52銭まで売り込まれ、急落した。大きな重しと考えられたのは、26日に行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見の内容だった。インフレを鎮静化させる姿勢が従来よりも「タカ派」と受け止められ、金融引き締めへの警戒感が強まった。
国内では岸田文雄首相が、25日の衆院予算委員会で「株主資本主義からの転換は重要だと認識している」と発言、投資家の反感を買った。岸田首相は来年度に金融所得課税の増税に加え、自社株買いを制限する考えを示している。
パウエル発言に「岸田ショック」が追い打ちをかけた構図だ。さらに急拡大を続けるオミクロン株や緊迫化するウクライナ情勢もあって、市場には緊張感が横溢した。携帯料金の引き下げの影響が消える4月以降、消費者物価指数の上昇率が日本銀行が目標としている2%に近づくとみられている。日銀は何かと批判の多いETF(上場投資信託)買いを終了する可能性が出てきた。そうなると株価は一段と下押しされる懸念がある。
サイバーエージェント株も1月27日、一時、242円(14.4%)安の1444円まで下げ、20年9月以来およそ1年4カ月ぶりの安値をつけた。前日の26日に発表した四半期連結決算は大幅な増益だったにもかかわらず、株価を下げたのはなぜなのか。さらに1月31日には1325円をつけた。
「ウマ娘」にピークアウトの懸念
21年10~12月期の連結決算は売上高が前年同期比31%増の1710億円、営業利益は2.8倍の198億円、純利益は2.1倍の60億円と好調を維持した。主力のインターネット広告事業では、制作した広告の効果をAIが予測する「極予測AI」などが貢献し、売上高は四半期ベースで678億円(15%増)となった。営業利益は57億円(1%増)。
インターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」のメディア事業の売上高は22%増の249億円、営業損益は38億円の赤字だった。ゲーム事業の売上高は95%増の583億円、営業利益は15倍の171億円と急伸した。21年2月から提供を始めた、実在する競走馬をモデルにしたスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が引き続き好調だった。提供開始から21年12月までの「ウマ娘」のダウンロード数は1200万件を超えた。
ゲーム事業の営業利益が全社営業の86%を稼いだ。「ウマ娘」効果は絶大だったが、ゲーム事業の売り上げは3四半期連続で減少した。ゲーム事業は季節に関係なく継続的な成長が期待されていたのに売上高の伸びが鈍化した。
ウマ娘がピークアウトしたのではないかという投資家の懸念は杞憂にすぎなかったのか。 「ウマ娘」効果が剥げ落ちれば、収益の悪化は避けられない。「ウマ娘」のようなヒットゲームが次々と生まれるわけではないからだ。
藤田晋社長はM&Aに活路を求める。メディア事業の強化のために、21年12月に映像制作会社のバベルレーベル(東京・新宿区)を子会社にした。バベルレーベルは映画『新聞記者』を制作した会社。このほか、民放のテレビドラマやテレビCMの制作も行っている。
サイバーエージェントはネットテレビの配信サービスを提供してきたが、制作への参入でコンテンツ力を一段と強化し、配信との両輪で収益の拡大を狙う。16年からABEMA事業を立ち上げた。ABEMAで配信されたコンテンツは、外部の制作会社やABEMAに共同出資するテレビ朝日系列の制作会社の手によるものだった。年間300億円とみられるコンテンツへの投資がかさみ、ABEMAは21年9月期まで6期連続で営業赤字である。
ABEMAの営業黒字化が最大の経営課題だ。バベルを子会社にしたのは、外部に対するコンテンツの提供で、新たな収益源をつくる狙いがあることはいうまでもない。