鹿島アントラーズは住友金属工業(現在は新日鐵住金、2019年4月からは日本製鉄)、浦和レッドダイヤモンズは三菱自動車(現在は三菱重工業)といった具合に、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)では、多くのチームの親会社は重厚長大型企業だったが、最近は新興企業の進出が目立つ。
IT大手のサイバーエージェントは10月1日、Jリーグ2部(J2)に所属するFC町田ゼルビアの経営権を取得したと発表した。ゼルビアのクラブ運営会社の第三者割当増資を引き受ける。出資額は11億4800万円で、全株式(議決権ベース)の80%を取得する。
ゼルビアはJリーグのなかでも珍しい、地域・市民がつくり上げたサッカークラブだ。現在J2で3位につける町田は初優勝を狙う。だが、本拠地の町田市立陸上競技場の収容人数や練習施設などがJリーグ1部(J1)の基準を満たしておらず、J1への参加資格「JIライセンス」を取得できていない。仮に今季優勝しても、来季はJ1に昇格できない。
サイバーエージェントの資金で天然芝の練習グランドやクラブハウスの整備に着手し、本拠地の改修計画もある。これによって早期のJ1ライセンス取得を目指す。
サイバーエージェントは2016年4月に開局した、無料で視聴できるインターネットテレビ局「Abema(アベマ)TV」で、大相撲やプロ野球、サッカーなどのスポーツ番組を配信している。Jリーグへの参入でコンテンツの充実を図る狙いがある。
サイバーエージェントは06年、東京ヴェルディに出資した。日本テレビ放送網に次ぐ大株主となり、サッカー好きの藤田晋社長がヴェルディの副社長を兼務していたが、わずか2年で撤退した。
この点について藤田氏は、「当時は筆頭株主ではなく、なかなか思うような経営ができなくて撤退した。10年以上前は企業規模的にも支え切れなかった」と振り返る。
一方で「僕がいたころのヴェルディは、選手補強費は断トツだったのに、それでも勝てず、サッカーって不思議だなと思った。決して日本テレビが悪いわけじゃない。誤解のないよう。ただ、限界を感じて撤退した」と、サッカー経営の難しさを感じたという。
その上で「サッカーをやってよくわかったのが、サポータ-、スポンサー、選手、監督の顔色を窺い続けてもダメ。強いリーダーシップがないとサッカークラブは経営できないと学んだ。ですから今回、大多数の株式取得にこだわった」と、8割の株式を取得した意図を説明した。
再挑戦については、「今回改めて、Jリーグの成長性、将来性に非常にポテンシャルが大きいと感じた。(ヴィッセル神戸を運営する楽天の)三木谷(浩史)さんが海外のスター選手(アンドレス・イニエスタ選手)を日本に呼ぶ流れもあるし、町田は東京発、世界に通じるビッグクラブへと成長させたいと考えている。ネットメディアの時代にクラブ経営は価値が大きい」と抱負を語った。