クラブ経営は火の車
サイバーエージェントが買収したゼルビア、RIZAPグループ入りしたベルマーレ、ジャパネットHDの子会社になったV・ファーレンの経営状態を見ておこう。
Jリーグクラブ経営戦略本部は、17年度のJ1・J2・J3に所属するクラブの経営情報をまとめた。今季J1に昇格したベルマーレとV・ファーレンはJ2時代の実績である。
V・ファーレンの高田氏は「J1で戦うには最低20億円の資金は必要」と語っている。
17年度のクラブの事業規模を表す営業収益(広告料・入場料など、売上高に相当)は、浦和レッズが79.7億円でトップ。J1平均の営業収益は40.8億円、J2は14.1億円、J3になる4.2億円と大きく減り。格差は歴然としている。
親会社が変わることで経営内容が好転した典型例がV・ファーレンだ。16年度(16年12月期)の営業収益は7.4億円、当期損益は1.3億円の赤字、累積赤字は3.2億円あり、存亡の危機に立たされた。
高田氏が手を差し伸べた17年度(17年12月期)の営業収益は11.2億円、当期利益は0.5億円ながら黒字に転換し、累積赤字は2.7億円に縮小した。
V・ファーレンは現在、J1で最下位にいる。17年度の営業収益はJ2の平均を下回る。これほどの弱小クラブがJ1に昇格したことで、「奇跡」と評されたのだ。J1でほかのチームと互角に渡り合うためには、有力選手を獲得する必要がある。30~40億円用意しなければ充分な補強はできないといわれており、ハードルは高い。
ベルマーレの17年度(18年1月期)の営業収益は15.6億円、当期損益は0.8億円の赤字、累積赤字は9.4億円。累積赤字は京都サンガF.C.の34.5億円に次いで大きい。RIZAPグループがいかにして、ワースト2の累積赤字を圧縮させるかがポイントとなる。
ゼルビアの17年度(18年1月期)の営業収益は7.0億円、当期利益は0.2億円の黒字、累積赤字は2.4億円だ。純然たる個人出資のクラブだったため、営業収益はJ2平均の半分である。
ゼルビア町田買収のトバッチリを受けたサガン鳥栖
サイバーエージェントがゼルビアを買収したことにより、サガンがトバッチリを受けたと報じられている。サイゲームスは15年7月からサガンとスポンサー契約を結んだ。スポンサー契約としては異例の年間5億円以上の大型契約だ。今夏にはアントラーズから元日本代表FWの金崎夢生選手や、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレス選手が加入するなどチーム力強化に貢献してきた。
サガンの17年度(18年1月期)の営業収益は33.5億円、当期利益は800万円の黒字に転換したが、16.1億円の累積赤字を抱えている。新たに年間5億円超の有力スポンサーを見つけることは難しい。サイバーエージェントのゼルビア買収の余波で、サガンは大きな打撃を受けることになる可能性がある。
楽天がオーナーとなっているヴィッセルを見てみよう。17年度(17年12月期)の営業収益は52.3億円、当期損益は1.5億円の赤字で、累積赤字は6.5億円に上る。
ヴィッセルの営業収益は、レッズに次いで2位。人件費は前年度比10.3億円増の31.0億円とJリーグトップだ。移籍金3億円超、年俸6億円(いずれも推定)といわれる元ドイツ代表FWのルーカス・ポドルスキ選手を獲得したことによる。今季はスペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手を推定年俸32億円で獲得しており、今季の人件費がどこまで膨らむのか見ものである。
サイバーエージェントは、楽天の向こうを張ってゼルビアの補強に大金を注ぎ込むのだろうか。
累積赤字を抱えているチームは、J1の18クラブのうち11クラブに上る。J2では、22クラブのうち15クラブ。ITの新興企業がJリーグのクラブを買収するケースが今後、さらに増えるかもしれない。
(文=編集部)