井原氏は「スナール氏とボロレ氏からは、日産の業績回復が最優先で、しっかり支えていくと言及があった。問題ないと取締役会でも判断した」と強調したが、「そんなきれいごとではない」と冷ややかに見る向きが多い。
常勤の取締役をルノーは2人確保した上、社外取締役に仏ミシュランタイヤ日本法人(日本ミシュランタイヤ)会長のベルナール・デルマス氏を推薦。日産はこの提案も飲んだ。ミシュランはスナールの出身企業でもある。
一方、日産は現在の常勤監査役の永井素夫氏が社外取締役の候補になった。永井氏は、みずほ信託銀行の元副社長である。
井原氏と豊田正和氏の社外取締役は続投。永井、井原、豊田の3氏を日産側とカウントすれば“日産関係者”は5人となる。ルノーは3人なので、数の上で有利となる、と日産社内では皮算用している。ちなみに、豊田氏は日本エネルギー経済研究所理事長で経済産業省OB。
取締役会議長には新たに社外取締役となる木村康・JXTGホールディングス相談役(前経団連副会長)の就任が有力視されている。
取締役会議長への就任を念頭に取締役に招請することを検討してきた榊原定征・前経団連会長は候補に残らなかった。榊原氏は日産のガバナンス改善特別委員会の共同委員長を務めたうえ、暫定指名・報酬諮問委員会の委員でもある。日産に会長職を廃止して取締役会議長のポストを新設するよう提言したガバナンス委の主要メンバーが、自らその役職に就くことを疑問視する声が社内外にあった。「お手盛り」と強く批判されてきた。
“ゴーン・チルドレン”の筆頭といわれてきた志賀俊之氏は、取締役を退任する。
西川新体制は「統合」の火種を残したままスタートを切ることになる。6月の定時株主総会で西川氏への賛成票がどの程度になるかに関心が移った。「80%」を切るようなら、「株主は実質不信任を西川氏に突きつけた」との厳しい評価が下されることになる。
日産は監査役設置会社から指名等設置会社に移行する。経営の執行と監督機能を分離し、再び“カルロス・ゴーン事件”が起きないようにする腹づもりだが、「ルノーvs.日産」のつばぜり合いが激化することは避けられない。