星野、川口、関の3氏と、中国担当の内田誠、北米担当のホセ・ルイス・バルスの両専務執行役員を最高意思決定機関のエグゼクティブ・コミッティ(EC)のメンバーに新たに加える。
星野氏の夫は星野リゾートの星野佳路社長。朝子氏は旧日本債券信用銀行出身のマーケティングのプロで、ゴーン前会長がスカウトして専務執行役員に大抜擢した。
川口氏はゴーン追放を仕掛けた中心人物のひとりとされている。菅義偉官房長官との太いパイプを持つ。
日本・アジア・オセアニア事業を担当するダニエル・スキラッチ副社長は、5月15日付で退任した。今年1月の電気自動車(EV)リーフの改良型を発表する会見でスピーチを任されるなど、世界に向けた「日産の顔」であった。スキラッチ氏はゴーン派ではないが、混乱続きの日産に見切りをつけたとみられている。
日産とルノーの合意文書には「ルノーは日産のCOO以上のポストの人材を指名できる」とある。4月23日の取締役会で人事案の議論にテレビ電話方式で参加したルノーのジャンドミニク・スナール会長から「山内氏のCOO就任について異論は出なかった」(日産幹部)とされる。
その一方で、スナール氏は4月12日、パリで日産の西川社長に経営統合を打診したと伝えられている。提案と合わせてボロレ氏を日産の取締役にすることや、ルノー出身者をCOO以上のポストに就任させるよう求めたとされている。合併推進派を複数、日産の経営陣に送り込み、日産の取締役会で議論をリードしていくとの思惑がある。
日産とルノーがぶら下がる持ち株会社のトップ(会長兼CEOが有力)の椅子には、スナール会長が座る案が現地では報道された。
日産の株価が急落
日産の株価が下げ足を速め、連日の安値更新となった。5月15日には一時、8%安で800円割れとなった。一時、772.8円と年初来安値をつけた。20日には一時、763.9円まで下げ、再び年初来安値を更新した。23日には744円まで下げ、連日の安値更新である。
5月第3週末にはゴーン元会長が逮捕されて半年を迎えたが、逮捕当日(18年11月19日)の終値は1005.5円。5月15日現在で23.1%安だ。同じ期間でみるとトヨタは1.8%安、本田技研工業(ホンダ)は13.2%安で、日産の下げが突出している。
日産の20年3月期決算の連結純利益が46.7%の減益。トヨタは19.5%増益でホンダも8.9%増益を予想している。収益格差が株価に反映されている、とアナリストは分析する。
北米販売の不振、ゴーンの拡大路線のツケ、19年3月期の営業利益が10年ぶりにルノーのそれを下回ったなど、ネガティブな報道が相次いだ。
株価急落のもうひとつの原因が減配(前期57円から今期40円に減らす)だ。過去には、会社の実力を上回る高い配当を実施してきた。これはゴーン体制下、配当金は43.4%の大株主のルノーへの貢ぎ物という側面があった。ルノーvs.日産の対立が激化すれば、今後も減配の可能性がある。
ただ、日産の株価がこれ以上下がると、「ルノーによるTOB(株式公開買い付け)の動きが出てくる」(パリ在住の自動車アナリスト)という見方もあるため、注視し続ける必要がある。
(文=編集部)