日産vs.ルノー、これまでの経緯
18年11月、カルロス・ゴーン日産元会長が逮捕されて以降、ルノー・日産の対立が表面化したが、その後、議論を一旦棚上げにして衝突を回避してきた。
ところが、ルノー側が態度を一変。日産に経営統合を再提案した。ルノーの筆頭株主である仏政府の意向とされている。
仏経済紙レゼコーは4月26日、ルノーが日産に要求している経営統合について、「両社が対等な関係でアジアの第三国に持ち株会社を設立する計画が浮上している」と報じた。「持ち株会社は東京、パリの双方の証券市場に上場。両社の株主が受け取る持ち株会社の株式比率は公平になるように定める。日産がルノーとの対等な関係を求めることに配慮して、ルノーの依頼を受けた金融機関がまとめた。ルノーの筆頭株主である仏政府は受け入れに前向き」という内容だ。
日産は6月25日の定時株主総会で監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行することを決めており、西川氏の続投を中心とする新たな経営陣の人選の真っただ中だった。
ルノーがあえて経営統合を提案したのは、43.4%を出資する大株主であることを日産側に強く再認識させる狙いがある。日産の新たな経営陣にも、将来の統合に向けた議論を常に念頭に置くよう、要求したものと受け止められた。
日産は4月23日、ナンバー2のCOOに山内康裕CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)を昇格させるなどの執行役員人事を発表した。13年、志賀俊之取締役がCOOを退任し、空席となっていたCOOのポストが約5年ぶりに復活する。
副COO職を新設し、仏ルノー出身のクリスチャン・ヴァンデンヘンデCQO(チーフ・クォリティー・オフィサー)が兼務する。いずれも5月16日付だ。
山内氏は81年、国際基督教大学教養学部社会科学科を卒業し、日産に入社。購買部門の経験が長く、CCOとして生産や研究開発・購買の3部門を統括してきた。今後は世界規模のマーケティングや営業なども幅広く担当。ルノーの取締役も務めている。
日産は17年9月、資格のない担当者による検査の不正が発覚した。18年9月、再発防止に向けた対策を発表。検査担当者の増員や新たな測定装置などを導入。今後6年間で約1800億円を投資する。今年度、約670人を工場の検査関係で採用する計画も明らかにした。このとき記者会見したのが山内氏だ。「コスト管理と品質保証の優先順位が正しく判断されていなかった」と述べた。
日本事業担当の星野朝子氏、渉外担当の川口均氏、開発担当の中畔邦雄氏の3人の専務執行役員を副社長に昇格させる。事業の立て直しを担うポスト「パフォーマンス・リカバリー」を新設し、生産技術担当の関潤氏を専務執行役員のまま専任させる。