GDPの数字が良かったのはむしろ逆の意味
月例経済報告に先んじて発表された2019年1~3月期のGDP(国内総生産)も、あまりよい結果とはいえなかった。物価の影響を除いた実質成長率はプラス0.5%(年率換算プラス2.1%)と、まずまずの数字に見えるが、これは輸入の減少と住宅投資によるものであり、日本経済の実力とはいえない。
輸入の減少は、中国向けの輸出が減少していることから、企業が原材料の仕入れを抑制した結果であり、今後の輸出減少にもつながる話である。輸入を大きく減らせば、純輸出が増えるのでGDPが増えたように見えるが、状況はむしろ逆と考えたほうがよいだろう。住宅投資の増加は消費増税を見越した、いわゆる駆け込み需要である可能性が高く、当然のことながら永続性はない。
GDPの6割を占める個人消費はマイナス0.1%、将来の収益の源泉となる企業の設備投資はマイナス0.3%と相変わらず低迷している。日本はリーマンショック以降、個人消費が低迷し、企業の設備投資も増えないという状況が続いてきたが、今期もそれが継続したと判断してよいだろう。
消費が低迷しているのは、社会保障など将来に対する不安が大きく、国民が支出を大幅に抑制しているからである。日本の場合、企業の生産性が低く、賃金を上げられないという事情もある。物価上昇に対して賃金が追いつかないため、労働者の実質賃金は下がり続けた。
リーマンショック後、GDPの数字が良かった時期は、決まって輸出が増えたタイミングであり、消費と設備投資の弱さはずっと変わっていない。米国の景気が鈍化したり、米中交渉がまとまらず、高い関税が課された場合には、輸出はさらに減るので、日本の景気も落ち込むだろう。
過度な現状肯定が経済を低迷させている
日本経済に占める輸出の割合はここ20年で大幅に低下しており、日本はもはや輸出立国とはいえない状況になっている。これは先進工業国が必ず通る道なので、輸出の割合が低下すること自体は問題ではない。だが日本の場合、他の先進国のように輸出型経済から消費型経済への転換をうまく進めることができなかった。
もはや輸出には頼れない状況であるにもかかわらず、輸出立国時代の産業構造が温存されている。市場環境と産業構造に大きなミスマッチがあり、これが日本経済の低迷を長引かせている。