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富士通の苦境、失望広がり株価低迷…「システム開発」モデルから抜本的転換へ

文=Business Journal編集部
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富士通本社がある汐留シティセンター(「Wikipedia」より)

 1月28日の東京株式市場で富士通株が急落し、東証1部の値下がり率第2位という記録をつくった。一時1万5005円まで下落し、21年3月以来の安値をつけた。終値は1675円(10%)安の1万5165円だった。2月1日の終値は1万4660円と1万5000円を割った。

 1月27日に発表した21年4~12月期の連結決算(国際会計基準)で、主力のITサービス事業の業績予想を引き下げたため、失望売りが広がった。4~12月期の売上高にあたる売上収益は前年同期比1%増の2兆5435億円、営業利益は6%減の1466億円、純利益は9%増の1242億円だった。営業利益は前年同期に計上した携帯電話販売代理店事業の譲渡益がなくなり減益となったが、純利益段階では北米での事業再編に伴う税金負担の軽減が寄与した。

 22年3月期の業績予想は売上収益は前期比1%増の3兆6000億円、営業利益は3%増の2750億円、純利益は1%増の2050億円。ほぼ横ばいの業績で、かろうじて増収増益というかたちをとっている。

 富士通が成長の柱に据えるITサービスのテクノロジーソリューション事業に投資家は注目している。中韓勢などとの競争で劣勢が続いたスマートフォンやパソコンなどハード事業を切り離し、経営資源をITサービス分野に集中させてきた。

 富士通が得意としてきた官公庁や企業向けシステムを開発して納入するビジネスモデルからDX(デジタルトランスフォーメーション)支援で稼ぐ体制への転換に力を入れる。継続的にサービス利用料を得る仕組みを構築する。

非中核事業が業績を支える

 この成長分野の伸び悩みが決算で浮き彫りになった。4~12月期のテクノロジーソリューション事業の売上収益は微減の2兆1509億円、営業利益は17%減の814億円。前年同期に売り上げに計上していたスーパーコンピュータ「富岳」関連の反動減を補えなかった。半導体調達の遅れに加え、業務の効率化に向けた成長投資を積み増したのが響いた。

 22年3月期通期の業績見通しは据え置いたものの、事業セグメント別のそれは見直した。主力のテクノロジーソリューション事業の売上収益は従来予想から500億円引き下げ3兆1000億円、営業利益を150億円引き下げ2050億円とした。半導体不足が続いているうえに、自治体、中小企業向けの受注が低調なことを受けて、業績を下方修正した。テクノロジーソリューション事業の業績予想を引き下げるのは21年10月の21年4~9月期の決算発表時に続き、2四半期連続。ITサービス企業のなかで富士通の苦戦ぶりが際立つ。DX需要が旺盛ななかでの失速に投資家は失望した。

 業績を支えているのは非中核事業に位置付けている半導体部品部門のデバイスソリューション事業。22年3月期の売上収益は従来予想から300億円引き上げ3800億円、営業利益は150億円増やし650億円とした。磯部武司取締役執行役員専務最高財務責任者(CFO)は「正直デバイスに救われているところがある」と語った。

 富士通といえば理化学研究所と開発したスーパーコンピュータ「富岳」が有名。米国と中国がスパコン開発で主導権を握るなかで、「富岳」は世界一の計算速度を達成した。だが、富岳の活用は研究目的に限られ、企業の商用サービスを支える計算インフラとして使われていない。富岳は国が約1100億円を投じて開発した公共財産だ。富岳は税金を投入しているので、営利に使うことに批判が出る可能性があるためだ。

 富士通が富岳でスパコン市場の王者に返り咲けるかどうかのカギは、富岳を商用に活用できるかどうかにかかっている。ウクライナ情勢の悪化による日経平均株価の急落もあり、富士通の株価は低空飛行を続けている。3月3日の終値は1万6400円(前日比115円安)。昨年来の安値は昨年1月4日の1万4610円、高値は21年9月15日の2万2095円である。

旧富士通グループ企業は業績見通しの上方修正が相次ぐ

 旧富士通グループ内で富士通は一人負けの様相となった。かつての親会社、富士電機の22年3月期の連結純利益は前期比25%増の525億円の見込み。従来予想の19%増の500億円から25億円引き上げた。半導体製造設備やデータセンター向けに受配電設備などの需要が旺盛だ。

 元子会社のファナックは22年3月期業績予想を上方修正した。連結純利益は前期比69%増の1593億円の見込み。従来予想は60%増の1508億円だった。世界的に電気自動車(EV)への移行が進み、ロボットなどの引き合いが増えている。

 EVはエンジン車と比べて動力機構の構造がシンプルで、リチウムイオン電池の組み立てや部材加工の生産ラインにロボットを使う機会が多い。自動車の電動化に加え、中国や欧米を中心に人手不足やコロナ感染症対策による生産自動化でロボットの需要が増えている。

 富士通が筆頭株主だったアドバンテストの22年3月期の連結純利益(国際会計基準) は前期比24%増の863億円になる見通し。従来予想(13%増の787億円)を上方修正した。半導体試験装置の需要が堅調に推移し、2期連続の最高益となる。高性能コンピュータ(HPC)向けが増加しており、試験装置の販売が伸びる。

 富士通の現在のグループ内では子会社の新光電気工業が業績見通しを上方修正した。22年3月期の連結純利益は前期比2.7倍の490億円になる。従来予想(2.4倍の424億円)から大幅に引き上げた。高性能半導体向け部品の需要が想定以上に拡大し、自動車向けリードフレームの受注も増加している。

 富士通の経営陣は何度かスキャンダルに見舞われている。コロナ感染終息後の経済界はどうなるのか。ロシアのウクライナ侵攻もあり、国際情勢も揺れ動いていて、経営の透明性がより求められるようになった。

(文=Business Journal編集部)

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