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低価格路線や割引キャンペーンはもう限界…生き残る美容系サービス業の条件とは

松下一功/共感ブランディングの提唱者、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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美容師の手と髪を切る女性(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーの経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者・松下一功です。

 前回、新型コロナウイルスの感染が再び拡大したことで、企業も変化しないといけないとお伝えしました。具体的には、「顧客が喜ぶ体験」とはどんなものなのかを考え、「顧客がクリエイトできる部分」を残しながら実践していくこと。それが、今後のサービス業全般に共通する変化の軸となります。

 そこで今回は、サービス業の中でも、美容院・ネイルサロン・エステサロンといった美容系にスポットを当てて、お伝えいたします。

低価格路線から「単価アップ」へ転換を

 まず、サービス業全般に共通する、ひとつの目標からお伝えしましょう。これがないと、前述した変化をする意味が半減してしまうといっても過言ではないのが「単価アップ」です。

 これはコロナ前からいわれていましたが、サービス業は長い間「低単価高客数」ともいえる戦略から抜け出せず、お客さんをより多く集めるために、いかに単価を下げられるか、の激しい競争をしていました。

 しかし、ウィズコロナが普通となった今、お店側はソーシャルディスタンスを保つために店内のレイアウトを変えて席数を減らし、お客さん側は不要不急の外出をできるだけ避けるようになりました。

 その結果、1日の来客数が減るのは当たり前のことで、コロナ前と同じメニューや営業方法では、経営が悪化することは目に見えています。そこで重要となるのが「単価アップ」なのです。

 来店客数が減っても売り上げを確保するために単価を上げることは、もはや悪ではなく、必須事項となりました。お客さんをたくさん入れて収益を上げる方法からは卒業して、これからは少ないお客さんで収益を上げなければならないのです。

 経営を続けるために単価を上げて、その分、お客さん一人ひとりに時間をかけて丁寧に対応する。この方法しかありません。お客さんに喜んでもらえるような体験やサービスを提供し、長い時間滞在してもらって、しっかりお金を使っていただく。

 ホテルのラウンジが、いい例でしょう。おいしいフードやドリンクはもちろんですが、それよりも広々として落ち着いた空間や丁寧な接客の方を重視する人はいるものです。そういった人たちは、少々価格は高くても、カフェではなくホテルのラウンジなどを選ぶでしょう。

割引だけではリピーターは生まれない

 クーポン戦略が根付いている美容系のサービス業では、ほとんどのお店が何かしらの割引キャンペーンを行っています。たとえば、雨の日キャンペーンやペア割などです。

 しかし、これらは一昔前のやり方で、サービスを受けたい人がごまんといる中で、たまたま自分のお店が知られていないという状況で通用するにすぎません。割引キャンペーンはお店を知ってもらうのには最適な手法ですが、それに頼って継続するのは少し危険です。なぜなら、安さに釣られた一見さんしか来なくなり、常に新規顧客を集め続けなければいけなくなる可能性があるからです。

 また、キャンペーンの条件に当てはまらない人にとっては、そのお店へ行く選択肢が自然となくなってしまいます。これは、来店機会の損失といってもいいでしょう。

 先ほどの例でいえば、ペア割だと一人客が足を運ばないでしょうし、雨の日キャンペーンだと晴れの日には行かない、ということが考えられます。そのため、価格面のメリットを大々的に掲げたキャンペーンは、新規のお客さんを集める戦略としては成り立ちますが、リピーター作りには向いていないのです。

 そのため、美容系サービス業は、割引キャンペーンからの脱却を目指すことから始めるといいでしょう。

 では、割引キャンペーンに惹かれた新規のお客さんではなく、価格をそこまで重視せずに、何度もお店に足を運んでくれる客さんを作るには、いったい何をしたらいいのでしょうか? その答えは「自分の得意分野に当てはまるお客さんを探すこと」です。

 たとえば、お店にお年寄りとのコミュニケーションがうまいスタッフがいるとします。そのことをお店のスタッフ間で共有しておいて、実際にお年寄りが来店した際には、優先的に担当してもらう。そして、お年寄りのお客さんが満足するサービスや体験を提供できれば、口コミでお年寄りの新規客を見込むことができるでしょう。

 つまり、美容系のサービス業は店舗や企業としてのブランディングよりも、そこで働くスタッフのパーソナルブランディングの方が大切なのです。

 ここ数年で、いわゆる“間借り美容師”が増えているのも、そのためでしょう。これは、フリーランスの美容師などが“面貸し”という形でシェアサロンなどのスペースを借りて営業するスタイルですが、自分の得意分野に特化することで、それを求めるお客さんが集まり、経営が安定するのです。特に美容系は1対1の時間が長いので、お客さんは価格や立地などを気にしつつも、最終的には快適に過ごせる場所に足を運ぶ傾向にあります。

 美容系のサービス業に従事している方は、ぜひ一度、自分の得意分野は何なのかを考えてみてください。そして、その得意分野にマッチするお客さんを多く受け持つことを意識しながら働いていれば、新規顧客の獲得に追われることなく、指名だけで営業できる日が来るかもしれませんよ。

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