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元巨人ドラ1投手が“実質経営”の東郷証券、金商法違反で一斉逮捕…FX取引のパイオニア

文=編集部

 コンサルタント会社橘フェニックスは10年7月、林容疑者が設立したワンマンカンパニー。自ら経営する橘フェニックスが東郷証券に100%出資していることから、実質オーナー経営者となった。会長と呼ばれる林容疑者は月に1、2度東郷証券を訪れ、社員に「“売り上げを伸ばせ”と怒鳴りまくっていた」(関係者)という。

 東郷証券はインターネット取引手数料を0円にするなどFX取引業者のパイオニアとして知られる。東京本店のほか大阪市や松本市、金沢市、林容疑者の出身地である熊本市にも支店を置き、個人投資家を対象に連日、セミナーを開催。外国為替証拠金(FX)取引「くりっく365」サービスの手数料収入で売り上げを伸ばしてきた。

 売上高にあたる営業収益は15年3月期の3億円から12億円、29億円と飛躍的に伸ばしてきた。公表資料によると18年3月期の営業収益は35億8095万円、純利益5億2044万円をあげていた。なお、13年の営業収益は7980万円で、そこから売り上げは44.9倍に膨れ上がったことになる。

 変動する為替相場を利用して日本円と米ドルの通貨を売買して利益を得るFXは、顧客からの手数料がゼロでも、取引コストの売値と買値の差が業者の実質的な収入になる。FXで数千万円の損失を出す顧客があれば、損金の大部分が業者に渡っているとされる。

 取扱業者が多額の収入を得られるFX特有の“うまみ”が事件の背景にある、と指摘されている。損失補填は取引継続やトラブル回避が動機とみられている。損失補填しても、取引が続けば、それ以上の収入を得ることができるからだ。

損失補填の刑事事件化は21年ぶり

 90~91年、大手証券会社を巡る損失補填が相次ぎ明らかになり、社会問題となった。

 88年9月期から91年3月期までの損失補填額は、野村證券(279億円)、大和証券(253億円)、日興證券(565億円)、山一證券(619億円)など、大手・準大手・中小の合計21社で787件、2164億円に達した。

 証券取引法に損失補填を禁止する規定がなかったことから、91年に法律が改正され、禁止規定が明文化された。

 97~98年、証券大手4社と第一勧業銀行による、総会屋などへの損失補填が再び発覚した。逮捕者は、第一勧銀11人、野村證券3人、山一證券8人、日興證券4人、大和証券6人の計32人に上った。
(文=編集部)

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