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加藤浩次が疑問を抱いた「忘れ物でメーター入れたタクシー」が正しい理由

文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー
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タクシー(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 極楽とんぼの加藤浩次タクシーに携帯電話を忘れ、落とし物センターに連絡したところ、家まで届けてもらう際にメーター料金1800円を請求された、とラジオ番組で語った。加藤は事前にメーターを落とすことを了承していたとはいえ、「これは普通なのかな? 俺はよくわからない」と疑問を呈していた。

 タクシーに忘れ物をした際の対応は、状況や運転手、降ろしたエリアなどによってケースバイケースである。「回送にして届ける」会社もあれば、メーターを入れて届ける会社もある。下車してすぐに連絡があればメーターは入れずに下車地に戻るし、いつも利用してくれるロング客なら、やはり回送で戻り料金は受け取らない。

 タクシー会社には「無線の入りやすいエリア」が存在する。乗客が忘れ物をした車が無線エリアにいる場合、空車だと無線が入る可能性がある。大手の場合、無線は乗車地から一番近い場所にいる車に送られてくる。加えて、無線を断る回数が多いと罰則となるケースもあり、メーターを入れなければならないこともある。

“ゾンビ”の日に携帯の忘れ物

 つい先日、銀座で乗せた客を小岩で降ろした直後に乗った乗客が「運転手さん、携帯が落ちてるよ」と教えてくれた。その日は給料日後の金曜日で、なおかつ終電の直後。乗客があふれているため“ゾンビ”と呼ばれる状況だ。忘れ物の携帯から連絡をしようかとも思ったが、パスワードがわからないので電話がかかってくるのを待つことにした。

 小岩で乗せた客は「高速で千葉県成田市まで」とのこと。花輪インターを過ぎたあたりで前の客から電話がかかってきたが、運転中なのでもちろん出られない。「出てあげようか」という客に「30分後に降ろすので再度かけてください、と伝えてください」と頼んだ。

 30分後、小岩から乗せた客を降ろすと、すぐに電話がかかってきた。「今、成田にいるんですね」。おそらくGPSでわかったのだろう。私は、まず「会社に預けておくので、取りに来ていただくこともできます」と告げた。これだとタクシー代はかからないが、私の会社まで来てもらわなければならない。

 今や財布などの機能もある携帯は生活必需品だ。加えて、こちらの確認ミスもあるにせよ、車内の忘れ物は乗客の責任でもある。「すいませんが、住所を言いますので届けてもらえないでしょうか」と言われ、私はこう伝えた。

「了解しました。今は営業区域外(千葉県)ですのでメーターは入れませんが、高速を降りて都内に入ったら営業区域になるので、仮に乗車を断ると乗車拒否になってしまいます。ですのでメーターを入れなければなりませんが、よろしいでしょうか? 空車だと無線が入る可能性もあるので、実車状態にしなければならないのです。もし市川橋を渡った場所で待っていてもらえたら、無料です」

 しかし、「酒が入っていて運転ができない」とのこと。「いくらぐらいか」と聞かれたので、「市川橋を渡ってすぐに迎車メーターを入れますので、800円程度です」と告げると、快く了解してもらえた。

 この場合はすぐに連絡をもらえたため安く済んだが、時間が経ち、運転手が下車地から離れれば離れるほど、メーター料金もかかることとなる。その場合は「自分で取りに行くので、会社に預けておいてください」と言えば、タクシー料金はかからない。

 また、仮に客の住所が私の家の近くであれば、乗務を終えてから無料で持っていくこともできるが、そういうケースはめったにない。

 なお、運転手の中には悪質な輩もいる。「洗車したら椅子の下に携帯が落ちててさ。面倒くさいから“隅田川交番”に渡してきたよ」――隅田川に投げ捨ててきたのだ。

 私は絶対にやらないが、タクシーを降りる際は忘れ物がないように気をつけてほしい。また、領収書をもらっておくと、連絡がつきやすく、運転手も投げ捨て行為はしにくくなる。

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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