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フジテック社長を退任に追い込んだ香港系ファンドの手法に日本企業が戦々恐々

文=Business Journal編集部
フジテック社長を退任に追い込んだ香港系ファンドの手法に日本企業が戦々恐々の画像1
オアシス・マネジメントが公開したサイト

「創業家社長の粗探しをあそこまで本気でやられたら、ひとたまりもない」

 先月開かれたエレベーター大手フジテックの定時株主総会では、内山高一前社長の取締役再任案が総会開始直前に取り下げられるという前代未聞の事態が発生した。香港系ファンドのオアシス・マネジメントがフジテック創業家の内山家が保有する法人との間で「疑わしい取引がある」と異例のキャンペーンを展開したためで、関係者の間では冒頭のような発言が相次いだという。今回の「もの言う株主」の手法は、今後の日本の上場企業のガバナンスに影響を与えそうだ。

総会開始1時間前、突然の社長再任案取り下げ、内山社長は代表権のない会長に

 フジテックの株主総会は先月23日に開かれ、10時開始のわずか1時間前の9時に突然、 内山前社⻑の再任案が撤回された。同日、内山氏が代表権のない会長に就任し、副社長だった岡田隆夫氏が代表取締役社長に就任する人事を発表した。同社は退任の理由として内山氏の取締役の任期満了によるものとしているが、本サイトで既報したようにオアシスが独自のホームページを作成するなど内山一族のフジテックの私物化を告発するキャンペーンが実った格好だ。

 キャンペーンの内容を軽く振り返っておくと、フジテックが内山一族が私的利用することを目的として東京・港区の超高級マンションを購入したり、内山前社長が兵庫県西宮市の自宅の庭の手入れにフジテック社員を利用したりしたという内容を詳細な資料とともに公表するものであった。

 このキャンペーンはネット上でも話題になったが、これを受け、フジテックは「コーポレートガバナンス基本方針」の改定にまで追い込まれた。この新たな基本方針には「取締役や主要株主との取引については原則として行わないこと」が明記された。

「フジテックが告発内容を表面的に否定しても、実際には一定程度、内山一族の私物化を認めざるを得ないところまで追い込まれたようにしか見えない」(証券アナリスト)

内山前社長復権を匂わせる会長就任に、別の投資ファンドが社外取締役の解任要求

 フジテックのリリースによると、今回の内山前社長の取締役再任案の撤回で、オアシスの告発内容について第三者委員会による調査・検証を実施した上で、「関連当事者取引その他行為につき問題のないことが確認された際には、改めて、同氏(筆者注・内山高一氏)の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」としている。

 フジテック側としては内山氏の復権の可能性を残したわけだが、ここでもオアシス以外の英投資ファンド、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)がこの決定をめぐり、本来企業統治を外部から客観的に見るべき社外取締役の行動が株主の利益のためか疑わしいとして、社外取締役の責任を追及するための臨時株主総会の請求を検討していると発表した。

報道機関や調査機関のようなキャンペーンで企業経営者は戦々恐々

「もの言う株主」の集中砲火を受けているフジテックだが、今回もっとも日本の企業社会で注目を集めているのは、その詳細な調査手法だろう。前出証券アナリストがこう解説する。

「内山前社長の自宅の庭の掃除の写真などを見ると、どう考えても探偵や調査会社といったプロを雇ったとしか思えないようなレベルです。かつては総会屋が企業を独自調査して弱みを握り『解決金』をかすめとるというような行為が横行していましたが、今回のオアシスがやっているキャンペーンは世間に調査事実を公開し株主を中心に世論形成することが前提で、企業側からすれば裏金で解決できない分、タチが悪い。今後、創業一族が経営陣を占めている上場企業のガバナンス上の弱みをファンド側が徹底的に調べ公開していくという手法が広まる可能性は高く、トヨタなど超有名企業も標的にされることは十分にありうる」

 会社は誰のものか、というテーマはこれまでも議論されてきた。株主、従業員など答えは様々ではあるものの、少なくとも上場企業である以上は「経営陣の私物化」に対して厳しい目が注がれることはいうまでもない。

(文=Business Journal編集部)

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