CM内の“過剰な”注意書きテロップ、最近なぜ増えた?提供元企業さんに聞いてみた
この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は人気放送作家の山名宏和氏が、最近増えたテレビCM内の注意書きテロップへの疑問について迫ります。
【今回ご回答いただいた企業】
クレハ様
「CM上の演出です」
いつからこのテロップをよく見かけるようになったのか。今やあらゆる商品のCMで見かける。どこがCM上の演出なのかわからないものまである。近頃では、さらに注意文が足されている場合もある。例えば、バイク買取会社・バイク王と『ルパン三世』のコラボCMだ。「CM上の演出です」の後に、こう続く。
「公道走行時はヘルメットの着用が義務付けられています」
たしかにルパンも次元も五エ門も、ノーヘルでバイクに乗っている。しかし、だ。アニメだよ。3人とも架空のキャラだよ。というか、ノーヘル以前に全員大泥棒だが、そっちの罪はいいのか……。
もうひとつ少し前から気になって仕方ないのが、NEWクレラップのCMだ。かわいい姉妹が登場するシリーズCMで、そのひとつに『どこへ行く』編というのがある。何かを入れた器を持って、どこかへ行く妹を家族みんなで尾行する。向かった先は子犬のいる家。妹は家族に内緒でその子犬にミルクをあげに行っていた、というほのぼのオチのCMである。
このCMには2つの注意テロップが入る。
「器の材質により、こぼれる場合があります」
妹がミルクの入った器を傾けた時、このテロップが入る。商品の性能に関することだからこれはまだいいが、問題は次の子犬がミルクを飲んでいる場面に入るテロップだ。
「子犬用のミルクをあげています」
確かに、子犬に普通の牛乳を飲ませると腹をくだすことがある。しかし、ドラマ的には、ここは絶対冷蔵庫からこっそり出した牛乳だろう。どうしてこんな興ざめなテロップを出すのか。愛犬家からクレームでも来たのだろうか。
そこで、このCMの提供元でNEWクレラップを販売するクレハお客様相談室に直接聞いてみた。
「どうして、『子犬用のミルクをあげています』というテロップを入れているのですか?」
担当者 まあミルクといいましても、人間がですね、飲むものがございますので、やはり犬用という意味を持たせるためにですね、わかりやすくするためにわざわざ表現をテロップというかたちで入れさせてもらっております。ですので、特に深い意味というのはございません。
–最初はこのテロップを入れないで放送しようとしたことは、あったのですか?
担当者 やはり最近ペットブームでございますので、いろいろな食材が多くて、特に人間が食べるものも当然、ペットにあげても構わないというところもあるのですが、犬には犬用の、食品・食材というか、そういうのもございますので、それも意図してあげているんですということを、テロップで流している次第でございます。
–実際にクレームが来て、このテロップを入れているということではないのですね?
担当者 そういったことではないです。
–では、そういうクレームが来るかもしれないというのを見越してということでしょうか。
担当者 そうですね、「人間の食べるものをあげてはいけないんじゃないか」というようなお話も来る場合もございますので、誤解のないように(テロップを)流させてもらってるということです。
どのCMの注意テロップも、このような考えで入れているんだろうなあということがよくわかる回答だった。今後、ますます増えていきそうな注意テロップだが、僕も入れたほうがいいと思っているCMがある。化粧品や洗顔フォームの類いのCMで、よく女優が普段からそれを使っているかのように思わせるものがあるが、あれにこそ入れるべきじゃないか。
「CM上の演出です」
(文=山名宏和/放送作家)
<近況>
来年2月放送の仕事とかはちらほら入ってくるのだが、年末年始はレギュラー番組の拡大版の他、今のところあまりない。放送作家としてこれでいいのかと思うが、夏休みをとれなかったので、冬休みはちゃんととりなさいという天のお告げなのかもしれません。