ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 生保レディーもういらない?
NEW

生保レディーはいらない?生保、相次ぐシステム大幅刷新のワケ〜狙いは商品自動提案

【この記事のキーワード】, ,

生保レディーはいらない?生保、相次ぐシステム大幅刷新のワケ〜狙いは商品自動提案の画像1「Thinkstock」より
「GNP(義理、人情、プレゼント)」。生命保険業で長らく幅を利かしてきた営業スタイルである。逆に言えば、人縁だけで営業トークがなくても「GNP」さえあれば売れる旧時代的な業界であったが、少子化と晩婚化の進行で、国内大手生命保険各社が大量に抱える女性営業職員、いわゆる「生保レディー」が大きな転換点を迎えている。

「将来は、システムが勝手に適切な保険商品を表示できるような仕組みを構築しますよ」–。大手生保の首脳はこう囁く。ここ数年、日本生命保険、第一生命保険など大手だけでなく、太陽生命保険や朝日生命保険などの中堅も含めて、システムの大幅刷新に動いている。訪問予定や訪問先での顧客とのやりとりを、専用のモバイル機器を通じて入力する。背景にあるのは顧客情報の管理強化である。

「つい2年前までは顧客情報は紙ベース。それも一定期間たつと捨てていたほど」とある中堅生保社員が明かすように、生保会社は膨大な契約者の顧客情報、紹介などの見込み客を抱えながらも、情報を体系的に活用するという発想はなかったのである。ただ、少子高齢化の進行や、業界の構造変化で、新たな一歩を踏み出す必要が出てきた。

 日本生命OBは「営業職員は1割の優秀な職員と、すぐに辞めてしまう9割で支えられていると言っても過言ではない」とその実態を語る通り、実際、それまで就業経験がなかった主婦が、いきなり生保レディーになったりするケースも少なくない。同OBによれば、結局知人や親戚に声をかけて、営業先が広がらず終わりという職員が大半だという。また、第一生命OBも「右肩上がりの時代は、それでもよかった。ただ、少子化、非婚率の上昇で市場が縮小。若い層を中心に、人縁よりは価格で保険を選ぶ動きも目立つ。『働く男性と専業主婦』を前提にした我々のモデルが、完全に時代遅れになりつつある」と分析する。

●営業のIT化へカジ切る背景

 こうした大手国内生保の焦りを尻目に、最近では、コンサルティングを武器にした男性営業マンを揃えた外資系やソニー生命保険が躍進している。また、価格を重視する層を対象に、インターネットを使った保険販売を取り扱う企業も増えている。もちろん、大手生保各社も、これまでも生保レディーの営業力底上げに努めてきた。すぐに辞めてしまうのを防ぐように、入社後しばらくは固定給を厚くしたり、研修内容を見直したり、採用時期を絞ったりと工夫を凝らす。他業界で営業を体験してきた人材を別枠で確保する動きも見られる。ただ、それでも「大手だと営業職員の人数が万単位。底上げするのにも限界があり、IT化にカジを切り始めた」(中堅生保幹部)というのだ。  

 例えば、日本生命や第一生命、明治安田生命保険の生保レディーが使うモバイル機器は、パネルを押すだけで保険商品や社会保障制度について音声や動画が流れる。こうした施策の狙いについて、大手生保レディーは「言葉は悪いが、何も知らない新人でも保険を売ることができるようにした」と明かす。

 そして、各社がモバイル機器による営業力アップの次に見据えるのが、商品の自動提案だ。冒頭の生保首脳は「システムの関係もあり少し先の話になるだろうが、これまでの契約ケースなどを参考に、訪問先で必要事項を入力するだけで、最適な商品を提案できるようにする」と力を込める。 

 ネット生保も含め、業界関係者の多くは「生保レディーはなくならない。重要な販路」と語る。ただ、ネットや保険ショップなど販路の多様化もあり、縮小路線を歩むのは間違いないと見られている。各社が注力するIT化は、転換期を迎える生保レディーに新たな風を吹き込めるか否か。多様化の道筋には、その形態さえも変えてしまう勢いがあることだけは確かである。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

生保レディーはいらない?生保、相次ぐシステム大幅刷新のワケ〜狙いは商品自動提案のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!