期間限定で販売中の「ココイチ」こと「カレーハウスCoCo壱番屋」の『「 」(ナナシ)カレー』。山のようにそびえたつ巨大なホロホロの豚肩ロース肉が特徴的で、「肉塊カレー」とも呼ばれ話題を呼んでいる。その圧倒的な肉の量が魅力的である一方、「肉塊LEVEL3」は2371円(税込、以下同)と注文するにはかなり勇気がいる価格設定になっている。そこで今回は、果たして価格に見合う価値はあるのか、外食の専門家に忖度抜きでレビューしてもらった。
国内グループ店舗数約1200店を誇り、国内カレーチェーン業界で圧倒的な1位の座にあるココイチ。そのココイチが満を持して投入した「 」(ナナシ)カレーは、真空加熱することでスプーンでほどけるほどホロホロ食感に仕上げた大きな豚肩ロース肉と、すりおろし玉ねぎのシャリアピンソースが特徴的で、皿の中央に山のようにそびえたつ肉が人々の食欲をそそる。ちなみに「肉塊LEVEL3」のエネルギー量は1776kcalとなっており、農林水産省が定める活動量の少ない成人女性の一日に必要なエネルギー量(1400~2000kcal)に相当する。
4月6日からの期間限定販売で(4月18日以降はなくなり次第終了)、全国約300店のみでの販売となっており、すでに予定より早く販売終了する店舗も出るなど、予想を超える反響が生まれているようだ。
「名前はまだ無い。」というキャッチコピーが謳われ、「新メニュー名総選挙」と銘打って4月1~16日の投票期間中のファン投票によりネーミングを決めるというユニークな試みも開催中だが、気になるのはその価格。「肉塊LEVEL1」は1501円、「1」の1.5倍の肉量の「肉塊LEVEL2」は1951円、「1」の2倍の肉量の「肉塊LEVEL3」は2371円となっており、気軽に注文できるとはいいがたい。
この価格に見合う価値はあるといえるのか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。
食べ応えとしては「惜しい」
ココイチに行くお客の一番の楽しみは、自分の好みに合わせて豊富なバリエーションのトッピングとボリュームをカスタマイズできることではないだろうか。その視点から見れば、「 」(ナナシ)カレーはココイチの本流から外れてはいない商品といえる。都内のある店舗で同商品を注文してみたが、見た目も大きく、肉のサイズは大人の握りこぶしの半分ほどであり、謳い文句のとおりのホロホロ食感に仕上がっている。こだわりのシャリアピンソースも肉に合わせた味付けとなっており、ポークカレールーのアクセントとして好感は持てる。
しかしながら、価格相応の商品といえるかといわれれば、そうではない。今回は肉塊LEVEL2を注文したのだが、上下の肉が重なり合う部分にはシャリアピンソースがかかっておらず、下の肉はカレールーのみに浸して食べることになった。また、肉は柔らかくて食べやすいものの、食べ応えとしては「惜しい」としかいいようがない。真空調理という手法により、このサイズの肉をホロホロにできたことは評価すべき点だが、豚の角煮には遠く及ばない。塊であれば中心に火が通るようによく焼いて提供されることが多いが、その分、豚肉自体が固くなってしまう傾向にある。また、注文から提供までに少し時間を要した。店員さんに伺うと、「温めと焼き入れに時間がかかる」との答えだった。その旨をオーダー時に伝えれば、お客が待つ時間に感じる苦痛が軽減されるかもしれない。
食べ終わった後の感想としては、あまり満足感を感じられなかった。ココイチの通常商品の「ポークカレー」の価格から考えると、塊肉ひとつ900円くらいと計算できるが、脂身をそぎ落としたロース肉は肉汁をほとんど感じることなく、その淡白な味わいも影響してか、食べ進むにつれて一口目で感じたこの商品の優位性が薄まっていくように感じた。
話題性と新奇性にひかれてこの商品にトライする人は多いと思われるが、個人的にはポークカレーに「ロースカツ」2枚をトッピングしたほうが、お腹もお財布も喜ぶと感じた。商品の価格妥当性の視点と満足度の観点から、私は次のココイチ訪問ではこの商品を選ぶことはないだろう。
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)