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快活CLUB、ドリンクバー有料化を開始前日に中止の理由「期待の大きさを認識」

文=A4studio
快活CLUBのHPより
快活CLUBのHPより

 インターネットカフェ「快活CLUB」が、ウリである無料のドリンクバーとソフトクリームの提供を一部店舗で7月14日より有料化すると発表していたが、実施前に中止していたことがわかった。異例の決断に至った理由について、運営元に聞いた。

 全国に492店舗(6月現在)を展開する快活CLUBは、ワイドモニターやパソコン、リクライニングシートが備え付けられた鍵付き完全個室を3時間だと1660円(税込み、以下同)、24時間だと7020円で利用できるのが特徴(料金は店舗によって異なる)。仕事や映画・アニメ鑑賞、ゲームができるほか、コミック最大5万冊、雑誌100タイトル以上が読み放題で、店舗によっては複数人でカラオケやダーツ、ビリヤードをするスペースも設置。有料の食事メニューも豊富にそろえられており、従来のネットカフェというスタイルを超えたリラックス・エンターテインメントスペースとなっている。

 快活CLUBは、大手ビジネスウェアチェーン・AOKIホールディングス(HD)が2003年に1号店を出店して始めた事業。運営元の快活フロンティアはAOKIHDの完全子会社であり、快活CLUBのほかにカラオケチェーン「コート・ダジュール」、フィットネス「FiT24」「ライナ」を展開している。AOKIHDの2023年3月期連結決算の売上高は1762億円、営業利益は102億円であり、このうち快活CLUBを筆頭とするエンターテイメント事業の売上高は712億円、営業利益は33億円。ビジネススーツ市場縮小のなかで事業多角化を進めるAOKIHDにとって、快活CLUB事業が経営面で重要な存在となっている。

 そんな快活CLUBといえば、さまざまなサービスを無料で提供している点が多くの利用客を獲得する要因となっていたが、2022年に入り、これまで無料だったモーニング(朝食)やシャワー利用、タオル利用を有料化。さらにフードメニューの値上げ、学割割引率の引き下げ、土日追加料金の値上げなど実質的な値上げを敢行。さらに今月14日からは秦野曽屋店のみでドリンクバーを200円、ソフトクリーム付きのドリンクバーを300円で有料提供するかたちに切り替えると発表し、さまざま反応が集まっていた。

快活CLUBの人気の高さが示された

 だが、実は有料化が実施前に中止となり、現在も無料で提供されているという情報がSNS上で広まっているのだ。運営元の快活フロンティアに聞いた。

「快活CLUB秦野曽屋店でドリンクバー・ソフトクリームの有料化を本年7月14日から予定しておりましたが、実施前の7月13日に中止の判断をし告知させて頂きました」

 企業としてすでに有料化すると発表していたことを、その実施前に取りやめるというのは、かなり異例のことだが、中止の理由はなんなのか。

「今回の件について、非常に多くの方からご意見を頂戴した事に心より感謝申し上げます。ドリンクバー・ソフトクリームに対するご期待の大きさを改めて認識した結果、中止の判断に至りました。ご心配をお掛けし申し訳ございませんでした。」

 小売りチェーン関係者はいう。

「まず1店舗からスタートするということなので、運営元としては実験的な取り組みだったと考えられる。とりあえず1店舗に限定してドリンクバーの有料化を適用して、客数が減るかどうか、トータルでの売上の変動がどうなるのかを検証し、他店舗へ広めていく計画だったのだろう。快活CLUBはすでに固定客も獲得できており、価格やサービス内容、設備の充実さという面で競合他社よりも十分に勝っているといえ、たとえ無料だったドリンクバーを200円にしたところで、目立った客離れは起きなかっただろう。

 ただ、店舗数が約500店舗まで広まり日常的に利用する客がかなり増えてしまった今、『有料化』という話題が多くの人にインパクトを与え、想定以上にマイナスの反響がわき上がってしまった。今回の実施見送りは、客数減を懸念したというよりは、世間からの有料化へのネガティブな反応が無視できないほど大きすぎたため、配慮の姿勢を示さざるを得なかったということではないか。裏を返せば、それだけ多くの熱心なファンがついている証しともいえ、改めて快活CLUBの人気の高さが示された」

 当サイトは6月13日付記事『快活CLUB、なぜ人気サービスを続々廃止するのか…不満続出も、すべて想定内か』で快活CLUBの値上げの背景について解説していたが、改めて以下に再掲載する。

――以下、再掲載――

 漫画・ネットカフェチェーンの大手「快活CLUB」が、人気サービスを次々と終了させており、ファンから不満が続出している。

 無料モーニング廃止、シャワー無料&タオル廃止、ソフトクリームシロップ撤去など、快活CLUBのウリにもなっていたサービスが、どんどん廃止されているのである。

 2021年度の売上高は469億3200万円にも上り、日本経済新聞社が昨年10月にまとめた「サービス業調査」にて、漫画やネットカフェを指す“複合カフェ”業界における売上高1位を獲得していた快活CLUBに、何が起こっているのだろうか。

 そこで今回は、業界事情に詳しい流通ジャーナリストの西川立一氏に、快活CLUBがなぜ人気の各種サービスを取りやめる事態に陥ってしまっているのかなどについて、解説していただいた。

ネットカフェ業界でシェア1位の快活CLUB、親会社は紳士服のAOKI

 まずは快活CLUBの出自について振り返っておこう。

「2003年、多角化経営を進めていた紳士服チェーン店の大手AOKIグループが、ネットカフェ事業として快活CLUBの1号店を幕張(千葉県)にオープンさせました。その後、快活CLUBを続々とチェーン展開していき、紳士服事業に匹敵するAOKIグループの経営の屋台骨として存在感を強めていったのです」(西川氏)

 そんな快活CLUBは、今やネットカフェ市場で4割以上のシェアを占めているといわれている。

「もともとネットカフェ市場は個人経営のお店が多く、大規模チェーンがなかったブルーオーシャンでしたが、そこにAOKIが参入して蹂躙していったからです。AOKIは紳士服事業やカラオケ事業で店舗をたくさん持っており、それらの不採算店などを業態転換させて快活CLUBとしてオープンさせていったことも、功を奏したのでしょう。ちなみに、快活CLUBはフランチャイズ展開しておらず、全店が直営店なので利益率が高く、気づけばAOKIの主力となっていたというわけです」(同)

 だが快活CLUBも、ここ数年は少々苦しい状況にあるという。

「まず、ネットカフェ業界全体が縮小傾向なのです。10年ほど前に比べると市場規模は約半分にまで下がっています。一気に普及していったスマホに人々の可処分時間を奪われたことが大きな要因でしょう。ネットカフェのもうひとつの売りであったレンタル漫画も、漫画アプリの普及により、スマホで読む人が増えてしまいましたしね。

 さらにコロナ禍も痛手でした。ネットカフェはブースごとに仕切られてはいますが、それでも個室の上部や下部は空いているので、同じ空間に大人数が滞在することが前提となっていたサービスです。そのため感染リスクへの懸念から客数は減少しました。コロナ禍の影響は、営業利益の推移を見れば明らか。2018年度の営業利益は約15億円の黒字でしたが、新型コロナウイルスで外出制限や外出自粛がされていた2021年度は約30億円の赤字に転落してしまっていたのです。ただ、コロナ禍の終息が見え始めていた2022年度は約20億円の黒字に復活しています」(同)

各種サービス廃止の背景には物流コストの増加とターゲット層の変化

 ここからは不満続出の要因となっている各種サービスの廃止について伺おう。

「無料モーニング廃止、シャワー無料&タオル廃止、ソフトクリームシロップ撤去、ナイトパック料金廃止などがあります。また、フードメニュー値上げ、深夜店員不在でフード提供不可、学割割引率低下、土日追加料金値上げなど、実質的な値上げやサービス低下の方向に変更されたものもあります。それらの廃止・変更の背景にあるのは、先ほど解説したネットカフェ需要の低下に伴う長期的な売り上げ低下を見越した、運営経費の整理といったところでしょう。

 より直接的な原因と考えられるのが、近年の円安やウクライナ問題に関連した人件費の高騰、物流コストの増加です。特に、無料モーニング廃止やソフトクリームのシロップ廃止など食品系にまつわるサービスの制限は、食品系が物流コストの影響を強く受けているからでしょう」(同)

 こういった人気サービス廃止の影響で、大量のファンが離れてしまっては本末転倒ではないのか。

「確かに、人気サービス廃止で不満の声は漏れても、それで離れる顧客は少数でしょう。依然、設備や清潔度、店舗数の多さからくる利便性の良さでは、他の追随を許していませんからね。また運営側としては、多少離れるファンがいたとしても、節約できる経費と天秤にかけたときに、廃止していったほうがメリットは大きいという判断だったのだと思います。

 サービス廃止に批判的な声もあげる層がいることも理解はできますが、個人的には、これまで快活CLUBが行ってきた多くの無料サービスなどは、異例の手厚さだったように思います。後発で業界に参入したため、認知度を上げて顧客を囲い込むための“期間限定サービス”的な側面もあったのではないでしょうか。現在は盤石の業界1位になり、さらにコスト増加も重なったことから、このタイミングで過剰だった各種サービスを廃止し始めたというのは、適切な経営判断といえるでしょう」(同)

 なるほど。一部ファンから不満の声があがるのは織り込み済みで、デメリットよりもメリットが大きいというジャッジを下していたわけか。今後、快活CLUBのサービス、そして業界内の地位がどう変化していくのか、展望を伺った。

「これまでの快活CLUBは、メインターゲットだった10代から30代向けのサービスを行ってきたように思えます。ですが先述のスマホ普及による客足の低下、加えて高齢化社会が到来するという社会変化を鑑みると、いつまでもこうした若い層だけに向けたサービスを提供するのではなく、今後は中高年層をメインにしたサービスを展開していくのではないでしょうか。

 AOKIは『FiT24』という24時間営業のセルフ型フィットネスクラブの事業も展開しています。中高年の健康管理需要を紐づけて、快活CLUBの店舗にFiT24を併設したり、快活CLUBを利用することでFiT24をお得に利用できるサービスを付与するといった方向に、舵を切っていく可能性もありそうです。

 業界内の地位ですが、そもそも競合といえる大型ライバルチェーンがないので、大きな変動はないでしょう。ネットカフェ事業の本質は“空間を提供する”ということで、自宅以外の場所で気軽にくつろげることに価値があるのです。そのサービスの根幹を守っている限り、大きく低迷するようなことはないと思います。現在、快活CLUBをテレワークに使う人も増えているようですが、こうした需要の変化に素早く対応できるというのもAOKIグループの強みといえるでしょう」(同)

 各種サービスを廃止し、不満が続出していたことは事実のようだが、経営戦略としては英断ということなのかもしれない。業界王者の地位は、まだまだ揺るがなさそうだ。

(文=A4studio)

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