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無印良品・不揃いバウムの疑問…安くない・不揃いではない「訳あり商品」増加の理由

文=清談社、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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無印良品「不揃いバウム」(無印良品の公式サイトより)

 最近、スーパーの食品売り場で「不揃い」「訳あり」などと銘打った商品をよく目にするようになった。商店やスーパーなどでは、パンの耳など商品の端材部分や商品規格に合わない規格外品などを廉価で店頭販売することはよくある。また、メーカーや小売店としては「不揃い」「訳あり」を謳うことで安さの理由を明らかにすることで、安かろう悪かろうではなく、正規品と同等の品質であることをアピール。規格外品の廃棄処分の低減による環境負荷の低減にもつながり、SDGsへの取り組みとしても注目されている。そこで、小売店やメーカーが規格外商品を扱う理由や狙いについて専門家に聞いた。

 無印良品の人気商品「不揃いバウム」シリーズ。濃厚な香りが漂う「不揃いバナナバウム」や、リッチな風味の「不揃いバターバウム」など、季節限定品を入れると20種類以上のフレーバーが販売されており、熱烈なファンも多い。消費者にとっては、その美味しさだけでなく「不揃い」だからこそのおトク感も魅力だ。パッケージには「焼きムラや凸凹、変形など、おいしさに関係なくはじかれていたものも活かしました」と書いてあり、価格は税込み180円。一個当たりの重量は種類によって異なるが約90~110gで、3~4口ほどで食べ切れるサイズであることを考えると、他社の規格外商品と比べて格段に安い価格かといわれれば、評価は分かれるだろう。また、「揃っているバウムはどこに売っているのか」「不揃いでないバウムはどこに行ったのか」という話題もSNSなどでたびたびみられる。

無印良品で「揃っているバウム」は存在しない

 まず、ここ数年「不揃い」「訳あり」と謳う商品がよく目にされるようになった背景について、流通ジャーナリストの西川立一氏に聞いた。

「さまざまなものが値上げとなり、いまの消費者は価格に対して非常に敏感になっています。特に日常的に接する食品に対しては顕著で、形は悪くても、味や品質は変わらない『訳あり品』への注目がさらに高まっているといえます」(西川氏)

 無印商品の『不揃いバウム』は、いままでも人気の商品だったが、昨今の経済状況もあってさらに注目を集めているようだ。

「無印良品が1980年にスタートしたときのキャッチコピーは『わけあって、安い。』でした。つまり、無選別や包装の簡易化などで、そのぶん価格を安くするというコンセプトだったんです。それを考えると、この『不揃いバウム』は無印良品の本来の考え方に合致した商品ということになりますね」(同)

 疑問の答えを明かすと、「揃っているバウム」は存在しない。無印良品の『不揃いバウム』は、焼き上がった商品の「合格」のレンジを従来より広く取り、選別の工程を省いたもの。つまり「色や形が不揃い」という意味なのだ。

 業務スーパーなどで販売されている、富田屋の『訳あり あんドーナツ』も同様のコンセプトの商品。パッケージには「この商品は、当社基準に満たない製品を無選別にて袋詰した商品です。その為、大きさの大小、形状の違い等は、予めご了承をお願い申し上げます」と書いてあり、厳密な選別の工程を省いているという意味なのだ。

「スーパーなどでは、消費期限間近の惣菜や日配品、賞味期限の迫った菓子や加工商品を値引き販売することが一般的に行われていました。近年では、メーカーの段階で廃棄するのではなく格安で販売ルートに乗せて格安で販売するということが増えてきたという流れはあると思います」(同)

廃棄コスト削減、SDGsの観点での取り組み

 森永製菓が、看板商品のクッキー『ムーンライト』の製造工程で割れや欠けが出てしまった商品を「訳あり」パッケージとして商品化。通販サイトで販売し、反響を呼んでいる。

「メーカー側としても規格外となってしまった製品は廃棄しており、廃棄のためにもコストがかかっています。これを商品として販売することができれば、何重ものコストカットになります。さらに最近では、廃棄を減らすことはSDGsの観点からも前向きに取り組むべき課題とされており、訳あり品の商品化することで企業イメージの向上につながることにもなると思います」(同)

 これは消費者側にしても同じ。いままでは「値下げ品」や「訳あり品」を狙い買いしているとちょっとイメージが悪かったが、地球環境に協力していると思うと、胸を張って購入することができる。

「廃棄ロスをテーマにすると、『エシカル消費』と呼ばれる、意識の高い消費者の関心を集められる。そこまで考えなくとも、同じ品質で安く買えるなら、大半の消費者にとってもありがたいので、結果的に多くの層にリーチすることになると思います」(同)

 とはいえ、なかには本当に「規格外」なのか怪しい商品もあるという。

「アパレル業界でアウトレットブームが起きたときに、商品が足らなくなり、メーカーがアウトレット用の製品を作っていたという事例があります。食品でも『割れせんべい』や『割れチョコレート』といった商品の一部は、完成した商品をわざと砕いているものもあるのではないでしょうか。消費者は賢いのでそんなことは理解したうえで、品質と価格のバランスをよく見てから購入していると思います」(同)

「不揃い品」や「訳あり品」は、その商品がどうして安くなったのかという「ストーリー」があり、それも消費者を惹きつける理由のひとつとなっているようだ。

「日本は今後も値上げラッシュで、消費者は価格に対してますますシビアになっていきます。また、SDGsなど環境への意識も高まっている。このような状況はしばらく続きますので、訳あり商品の市場は今後も伸びていくと考えられます」(同)

逆にいえば、企業も消費者も、見た目を気にしている余裕がなくなってきているともいえる。より本質的な部分での商品力が問われていくようだ。

(文=清談社、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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