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ビエネッタの認知度4%に衝撃受けた森永乳業が捨て身のキャンペーン決行

文=佐藤勇馬
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「Remember Viennetta」プロジェクト特設ページ

 今年9月に発売から40周年を迎えた森永乳業のケーキアイス「ビエネッタ」の“知名度のなさ”が話題になっている。発売当初は一世を風靡したことから40代以上にとっては比較的なじみがあるが、Z世代の(15~25歳)の認知度は約4%という壊滅的な状況であることが判明した。この現状を同社は真摯に受け止めたうえで、Z世代の認知拡大と休眠顧客層の掘り起こしを目指した「Remember Viennetta」プロジェクトを開始した。

 「ビエネッタ」は欧州生まれのケーキ風アイスクリームで、日本では森永乳業が1983年9月から販売。長方形のケーキを模したアイスクリームと薄いチョコレートを幾層も重ねたもので、上部は波模様となっており、見た目がケーキのように華やかでパリパリとした独特の食感が楽しめる。アイスとしては高価格帯(現在の価格は通常タイプで税抜630円、カップタイプが税抜220円)で「たまに家族みんなで食べる贅沢アイス」というイメージが強かったが、そのプレミア感によって人気を集めてロングセラー商品となった。

 しかし、一世を風靡したのも今は昔。40周年を迎えるにあたって同社が全国1万人を対象に「ビエネッタ緊急調査」を実施したところ、同商品の写真を見せてもZ世代(15~25歳)の約4%しか名称を答えられず、40代の10分の1という結果に。全体でも12.7%にしか認知されておらず、名称の回答結果の中には「たわし」(18歳男性)、「見当もつかない。食べ物とは思えない」(23歳男性)といった切なくなる答えもあった。

 現実を突きつけられた同社は、「Z世代にも知ってもらいたい」「久しく食べていない方にも、また食べてもらいたい」という思いから「Remember Viennetta」プロジェクトを始動。プロジェクトの特設ページには「覚えてくれていますか!?ビエネッタ(40)です」「ファミコンのように一世を風靡していたのも、過去の栄光‼今も販売しているのに、『懐かしい‼』と言われるようになりました!!」といった自虐的な言葉が並び、その振り切れっぷりで話題を呼んでいる。 

 同プロジェクトでは、クラダシが運営するソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」とコラボし、同店のたまプラーザ テラス店で商品を販売。さらに、森永乳業公式SNSアカウント「森永乳業@もーりー(@morinaga_milk_)」にて「ビエネッタへの手紙」を募集し、400投稿以上集まるとフードバンク団体などを通じ子どもたちへ「ビエネッタ」40個をプレゼントするキャンペーンや、40周年パッケージの数量限定販売など、さまざまな取り組みを展開している。そこで、森永乳業に話を聞いた。

「2019年以降は前年越えが続いている状況です」

 まず、気になるのが、発売から現在に至るまでの売上の推移だ。

「発売当時は一世を風靡した商品ですが、時代の移り変わりとともに売り上げが低迷する時期もありました。ただ2019年以降は前年越えが続いている状況です」(森永乳業)

 発売当初から現在に至るまで、ビエネッタの味は変えられているのか、もしくは変わっていないのか。

「その時代によって好まれる味わいは変わっているので、その時代にあった味わいに変化させています。それでも、濃厚でコクのある アイスと、ほどよいカカオ感のあるチョコレートへのこだわりは変わらずに守られています」(同)

 かつては「ビエネッタ=たまに食べるちょっと贅沢品」というイメージが世間では浸透していたが、税別630円という価格の高さが消費者に購入を躊躇させる要因になっているのではないかという声もある。

「幅広い価格のものも発売されており、シーンや気分に合わせて購入するアイスを選択するようになってきています。ビエネッタは特に家族や友人で集まって食べるというシーンに選ばれる商品という価値を大事にしています。そのため価格に見合った価格に見合った満足感が提供できるように、素材や製法にはこだわりを持ち、お客さまに喜んでいただけるような商品をお届してまいります」(同)

「最需要期の冬に向けて、情報発信を強化していきたいと考えています」

 では、ユニークな今回のプロジェクトについて聞いていこう。Z世代の認知度が約4%、全世代でも12.7%という衝撃の結果をどのように受け止めたのか。

「若年層への認知率の低さは課題感として持っていましたが、全世代でも12.7%というのは想定を下回る結果であったと捉えております。10~20代の方は、家族と一緒にビエネッタを食べる機会があっても、自身で購入していないので記憶に残っていないこと、またサイズや価格など購入面でのハードルも高く、自分での購入するシーンが少ないことから、認知度が低くなってしまったと考えています。ただし、この結果を決して悲観的にとらえるのではなく、まだまだビエネッタブランドをより多くの方に知ってもらえるチャンスがあると捉えています」(同)

 認知度調査は厳しい結果だったが、40代以上の回答者からは「誕生日など、特別な日に家族で食べて幸せな気持ちになった」(48歳女性)、「幼少期に、なぜか風邪をひくと、両親が買ってきてくれて食べていたので、風邪をひくとちょっと嬉しかった思い出があります」(44歳女性)、「テストで良い点数をとった際に、母親から全部食べてよしと言われたことが嬉しい思い出だった」(46歳男性)、「ボーナス支給日に妻が買ってきて自宅で食べた」(56歳男性)といった心温まる思い出エピソードも寄せられた。

 単なるスイーツでなく「思い出に残る」という意味では、特別なポジションを築いているといえそうだ。

「今回の調査結果や直近でのSNSでの反応をみて、お客様のビエネッタへの熱量の高さを改めて実感しました。これを踏まえて、ビエネッタの最需要期の冬に向けて、情報発信を強化していきたいと考えています。とくに今までアプローチできていなかったZ世代に向けての情報発信や商品を食べるきっかけづくりを進めております。今回の反響をうけて、SNSでの追加施策も検討しています。また、今回お客様からいただいた多くのご意見をもとに、今後の商品展開なども検討を開始しておりますので、ご期待いただければと思います」

佐藤勇馬/フリーライター

佐藤勇馬/フリーライター

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

Twitter:@rollingcradle

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