北海道の陸上団体・一般財団法人北海道陸上競技協会(丸昇会長)が預貯金を水増しし、報告していたことがわかった。「南部忠平記念陸上競技大会」や小中高生らが参加する道内の陸上大会を主催する同協会だが、このまま行けば「解散」という事態は避けられない。
1500万円水増し報告、道の補助金不正流用調査の際に発見
同協会が毎年の決算で預貯金残高について1500万円水増しして報告していた。協会によると、実施した内部調査では5年前に残高がなくなっていたことが判明したという。本稿記者の取材に対し、協会の担当者は次のように回答した。
「現時点では、基本財産を管理していた預金通帳に、あると認識していたのに実際にはなくなっていた基本財産相当分の1500万円と把握している」
その上で、水増しが起きた理由については「精査・追究している」としている。11月1日には、協会の渡辺剛成専務理事が北海道庁で事情説明を行った。その際の記者レクチャーで配布された資料には次の文言が記されていた。
「昨年度は、コロナ禍による影響で参加料収入など全般的な収入が減少する一方、競技大会も徐々に再開され、コロナ対策を講じた上での大会運営の必要から例年以上に経費が掛かり、想定した収益を確保できませんでした」
「また、高齢者マラソン補助金の目的外使用の返還金やインターハイ・国体関連の支出など一時的な出費も重なり、例年道陸協が実施している合宿等の他の事業費の捻出が難しくなり、登録料を本来の目的とは異なる用途に使用していました」
協会に渦巻く批判、法人の解散は時間の問題か
水増しの発覚を受けて関係者からは批判の声が高まっているという。事情を知る地元紙記者は話す。
「水増しについては批判が根強い。北海道のブロック紙である北海道新聞では、『起こるべくして起こった』『自浄能力がない』などと陸上関係者の怒りやあきれた声について報じている。背景には2021年に発覚した北海道の補助金不正流用事件も関係しているのだろう」
21年、協会と一部地方陸協が北海道高齢者マラソン大会の補助金を不正流用していた事件が明るみに出た。北海道が公表している資料によると、道の調査結果として以下が発覚した。
(1)補助金の一部を一般財源に繰り入れ、他大会の事業費や団体の運営費に充て、目的外に使用
(2)架空の領収書を作成し過大に補助金を取得し、他大会の経費(宿泊費や交通費など)に充て、目的外に使用
これを受け協会側は、会計を担当する職員の任期に上限を設けるなどの対策を講じたが、それに意味があったのかどうかは、今回の水増しを見れば明らかだろう。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」202条1項には、一般財団法人は
「定款で定めた存続期間の満了」
「定款で定めた解散の事由の発生」
「基本財産の滅失その他の事由による一般財団法人の目的である事業の成功の不能」
「合併(合併により当該一般財団法人が消滅する場合に限る)」
「破産手続開始の決定」
などの理由で解散するとある。協会によると、日本陸連に支払う予定だったものの滞納している22年度分の登録料は735万2500円。このまま未払いが続くことになれば、協会の解散も時間の問題かもしれない。
協会側に「清廉潔白」を求めるのは酷か
協会が主催する大会には小学生や中学生、高校生など幅広い世代が参加するものがある。今回の水増しや補助金の不正流用といった不祥事は、学生の保護者を不安な思いにさせる。協会の担当者は「過去の反省に基づき財政再建策を構築、実践すること」により信頼回復してもらうように努力していくと回答している。
不祥事による影響を受けるのは参加者だ。22年度の大会成績について公益財団法人日本陸上競技連盟は次のように連絡しているという。
「競技者や審判員の方々は22年度の日本陸連登録料を適切にお納めくださり、また日本陸連の会員登録も完了している。北海道陸協から日本陸連に登録料が納付されていないことについて、登録会員の方々に何ら責任はない。よって、北海道の登録会員の方々の、22年度の公認競技会における競技成績や記録、審判活動の実績は、すべて有効であり、抹消することはない」
選手たちはとりあえず安堵するかもしれないが、果たして道陸連に自浄能力を期待できるのだろうか。
(文=小林英介)