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大雨でそのまま長期運休に突入…JR北海道、廃線議論が本格化、一部自治体は反発

文=小林英介
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JR北海道のHPより

 この酷暑はいつまで続くのか。8月23日には北海道札幌市で観測史上最高気温となる36.3度を記録し、記録的暑さといわれている今年の夏だが、お盆には日本列島を台風が襲い、せっかくの私たちの休日を奪っていったことは記憶に新しい。本稿記者が住む北海道では8月頭ごろに大雨が降り、JR北海道石北本線・上川-白滝間の盛土が流出。札幌・旭川-網走を結んでいる特急「オホーツク」「大雪」は運休を余儀なくされた。経営難に苦しんでいるJR北にとって、コロナ明けのお盆・夏休みは収益獲得の格好のチャンスだったはずであり、何ともいえない感情がこみあげてくる。

大雨で石北線2週間運休、一時138本運休も

 今年8月3日ごろから停滞する前線や北海道に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響により、平年8月の1カ月分の降水量に匹敵またはそれを超える量の雨が降る可能性があると、道内では報道されていた。北海道によると、7日朝の時点で音威子府村で床上浸水1件、音威子府村や士別市、滝上町で床下浸水計5件の被害があったという。

 JR北は6日に特急18本、普通列車120本の計138本を、7日は特急13本、快速・普通列車91本の計104本を運休した。JR北によると、大雨の影響で石北線の上川-白滝駅の間では線路の盛土が大量に流出した。7日に保線作業員が発見したという。この影響により、JR北は上川-白滝間の運転を見合わせることとなったため、旭川-北見間で代行バスを運転した。7日から運転を見合わせていた同区間は、21日に運転を再開。2週間ほど運休したことになるが、JR北としてはよく頑張ったといえるだろう。

苦言相次ぐ意見交換会、貨物等の課題は25年度中に最終結論へ

 時はさかのぼり7月。北海道庁の知事会議室。そこでは北海道の鈴木直道知事と「黄線区」沿線協議会の会長、副会長11名が相対していた。「黄線区」とは、JR北が「単独では維持できない路線」としている路線のなかで、輸送密度が200人以上かつ2000人未満の区間をいう。現在の黄線区は8路線で、名寄-稚内の宗谷線、釧路-根室と滝川-富良野の根室線、沼ノ端-岩見沢の室蘭線、東釧路-網走の釧網線、苫小牧-鵡川の日高線、新旭川-網走の石北線、そして富良野から旭川を結ぶ富良野線だ。この日に道が開いたのは「持続的な鉄道網の確立に向けた知事と沿線首長との意見交換会」。道の資料によれば、意見交換会では冒頭から苦言が相次いだという。地元紙記者は話す。

「沿線協議会の出席者からは、どうして新型コロナウイルスの影響があった段階で検証を行うのかと苦言が相次いだ。鈴木知事は国やJRに対してコロナを十分に考慮するよう伝えていくとしたが、不信感はなかなか拭えないだろう」

 また、北海道新幹線札幌延伸開業に伴ってJR北から経営分離される並行在来線の今後にも注目が集まっている。7月26日に国土交通省、北海道、JR貨物、JR北が開いた「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する情報連絡会」では、「北海道と本州の間の安定的な物流を確保していくための方策について、課題を整理すべく議論」した。道が公表した資料には、経営分離される函館-長万部間(海線)と長万部-小樽間(山線)について、次のような現状認識が示された。

(山線)
 22年3月開催の後志ブロック会議では、バス転換への合意がなされており、現在はバスを中心とした交通ネットワーク構築へ向けて動いている。

(海線)
(1)25年度中に結論を出すために渡島ブロック会議で検討中。
(2)海線は、道南いさりび鉄道や青函トンネル(津軽海峡線)と一緒に北海道と本州を結ぶルートを形成。輸送量は年間400トンであり、うち北海道からの玉ねぎの6割、ばれいしょの4割の輸送を担うなど、北海道の経済・日本経済にとって重要な役割を果たしている。

 そのうえで、海線が基幹的鉄道を構成しているという「事実がある」とし、連絡会で議論。また貨物についてもさまざまな話し合いを行った。連絡会は終了後に会見を開き、主に次の点を課題として挙げた。

・A:過去、貨物輸送のみを前提として設立した第三セクターはない。もし貨物の保守主体を新しく作るのなら様々な調整が必要になる。

・B:貨物輸送のみを維持する場合でも、毎年度数十億円規模での維持管理費用が必要。

・C:鉄道施設の維持管理要員確保も必要。JR北での採用等の状況を鑑みると、北海道新幹線札幌延伸開業時に多くの要員を出向により確保することは困難になる可能性が高い。

 この課題を踏まえ、連絡会では解決する課題が多く関係者間の複雑な利害調整を必要とすることから、「最終的な結論を得るためには、こうした諸課題の解決について一定の目途を立てる必要があることを確認」したという。連絡会は前述の「一定の目途」を令和7(2025)年度中と設定。今年中には有識者を入れた検討会議を立ち上げ、渡島ブロック会議の検討と並行し、個別の課題の解決方法を模索していくものとみられる。

日頃からの鉄道利用で廃線防げ、私たちの意識も重要

 赤字路線を多く抱えていることや、22年度の自己都合退職者が232人に上ることなど、JR北を取り巻く情勢は厳しさを増している。

「JR北に鉄道事業を任せていいのかという意見もちらほら聞こえてくる。北海道新幹線の並行在来線でもある余市-小樽間では車内が大混雑している。本当にこの区間も廃止すべきなのか再考を促す声があるが、廃線・バス転換は決定してしまった」(前出の地元紙記者)

 経営がギリギリの状態のなかでも、赤字または赤字に近い路線を維持する必要があるのだから大変である。

「大雨などでJR北が運休すると、そのまま長期間の運休につながってしまうのではないかと心配してしまう。経営が厳しいのはわかるが、利用している人の気持ちにもなってほしい」(沿線自治体の関係者)

 ただし、利用者が以前から安定的にいれば「廃線」を検討されることもない。やはり日頃から鉄道を利用することもまた、将来に向けてのアドバンテージになるともいえよう。

(文=小林英介)

小林英介/ライター

小林英介/ライター

ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体でも活動している。

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