大手製パン会社・フジパンが、原材料価格の上昇などを受けて従来の6個入りから5個入りに減量して販売していた「ネオレーズンバターロール」について、ひっそりと再び6個入りに増量していることが話題を呼んでいる。その理由は何なのか。また、なぜ「ネオバターロール」シリーズのなかで「ネオレーズンバターロール」のみ減量していたのか。フジパンに聞いた。
原材料価格・エネルギーコストの上昇を受け幅広い領域で値上げが続くなか、食品メーカー各社は買い控えを避けるために価格据え置きのまま容量を減らすステルス値上げを実施。今や消費者からも理解を得られるようになり、反発が起きる気配も薄まりつつある。
食品のなかでも容量を減らすことが難しいのが、1商品あたりの個数が明確な商品だろう。量の変化が目立つゆえに消費者からも認識されやすく、たとえば昨年に「キットカット ミニ」(ネスレ日本)の枚数が13枚から12枚に減った際や、「あんぱん」や「クリームパン」の「薄皮シリーズ」(山崎製パン)の個数が5個から4個に減った際には大きな注目を浴びた。
そんななか、フジパンの「謎の行動」が一部で話題を呼んでいる。製パン業界で山崎製パンに次ぎ2位のフジパングループ本社は(3位は敷島製パン)、「本仕込食パン」「生ぶれっど」ブランドで知られる食パン、「ネオバターロール」「ロングスティック」「スナックサンド」などのロングセラーシリーズのほか、近年では「生くろわっさん」「生べーぐる」「生すなっくさんど」などパッケージに大きく「生」と書かれた商品で知られる老舗メーカー。創業は大正11年(設立は昭和26年)であり、昭和23年設立の山崎製パンより長い歴史を持つとされる。傘下のグループ企業を通じて、コンビニエンスストアや小売店向けの弁当・総菜製造、和洋菓子製造、スーパーやショッピングセンター内のパン製造・販売店舗の運営なども展開。年商2882億円(23年6月期)、従業員数約1万4000人を誇る大企業だ。
「『まるごとバナナ』『北海道チーズ蒸しケーキ』などパン以外でも人気商品を持つ山崎製パンと比べると、年商も約3分の1で規模には差がある。スーパーのパン売り場や生洋菓子売り場でも山崎製パンに『押されている』感は否めないものの、堅実かつ安定した大手食品メーカーには違いない」(大手スーパー関係者)
そのフジパンは「ネオレーズンバターロール」(実売価格:税込193円、店舗により異なる)の個数について、昨年3月納品分以降は従来の6個から5個に減量していたが、今月から「ひっそり」と再び6個に戻していることが発覚。これが「ステルス値下げ」「サイレント増量」だとしてSNS上では以下のように話題を呼んでいる。
<こういうのって一旦減らしたらそのまま戻さない印象だったわ フジパンはもっとアピールして良い>
<元に戻るなんて初めて聞いた>
<これはありがたい どっちが3個食べるか 母とけんかになってたから>
<朝にしょっちゅう食べるから個数戻してくれてありがたい>
<この前5個になってて子供達で分けられないじゃん!ってショック受けてたとこだった>
フジパンの見解
そこでフジパンに取材した。
――昨年3月に6個入りから5個入りに変更した理由は。
フジパン「6個から5個に入り数を変更したのは、輸入レーズンの世界的な減産及び、レーズンの国際価格の大幅な高騰がありました。レーズンの価格推移は、昨年から大きく変動はございませんが入り数を変更以降、お客様より入り数に関するご意見を承りました。弊社内にて協議し、入り数を6個に変更する事を決定致しました」
――5個入りから6個入りに戻した理由は何か。また、1個あたりの容量は少なくなっているのか。
フジパン「お客様から入り数に関するご意見を承り社内協議の上、6個に変更いたしました。6個から5個、5個から6個に入り数の変更は実施しましたが、生地量やレーズン量、マーガリン量など1個あたりの規格変更はございません」
――「ネオバターロール」シリーズのなかでレーズン入りの「ネオレーズンバターロール」のみが個数減となっていた理由は何か。
フジパン「輸入レーズンの世界的な減産及び、レーズンの国際価格の大幅な高騰が理由ですございます」
(文=Business Journal編集部)