中古車販売大手ビッグモーター(BM、東京)の保険金不正請求問題は、保険金を支払う側の損害保険会社と親会社のトップがそろって引責辞任する事態に発展した。損害保険ジャパンが不正を認識しつつ、BMに顧客を紹介した背景として金融庁が指摘したのは、売り上げ重視の企業文化。顧客をないがしろにする風土を刷新できなければ、失墜した信頼は取り戻せない。
BMは中古車販売・整備と保険販売を兼ねる「兼業代理店」として、年間約200億円もの自動車保険料を取り扱っていた。損保ジャパンなどの損保会社はBMに事故車を紹介。BMは紹介台数に応じて自動車損害賠償責任(自賠責)保険契約を割り当てる「もたれ合い」の関係にあった。
BMへの紹介競争が激化する中、損保ジャパンが導入したのが保険金支払いに当たって修理箇所の画像だけでチェックする「簡易調査」。不正請求が疑われる事案が増えても、損保ジャパンはBMの反発を恐れて放置した。水増し請求により、顧客は保険を使って等級が下がり、保険料の支払いが増えるなどの不利益を被った。
金融庁は25日、損保ジャパンと親会社SOMPOホールディングスに業務改善命令を出した。損保ジャパンが不正に目をつぶった原因に関しては、「トップライン(保険料収入)を確保したいとの意識」「他の損保会社に大口取引先のBMを奪われることを危惧し焦燥感を抱いた」と指摘。顧客の利益よりも収益を重視する企業文化の是正を求めた。
SOMPOに対しても、子会社の経営管理が十分に機能しなかったとして、ガバナンス(企業統治)体制の抜本的な強化を命じた。3月末で退任するSOMPOの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者は記者会見で、「グループ経営に重大な影響を及ぼし、お客さまの信頼を失う危機的な事案に発展する可能性があるとの認識を持てなかった」などと釈明に追われた。
意識改革を託された損保ジャパンの石川耕治次期社長は、「営業を優先する企業風土やカルチャーをすべて変えたい」と「公約」。営業成績偏重の人事評価も見直す方針を示したが、染み付いたコンプライアンス(法令順守)軽視の姿勢を改めるのは容易ではない。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/01/26-19:32)