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国交省、損保ジャパンから団体保険料40%割引の厚遇…ビッグモーター調査に影響は

文=Business Journal編集部、協力=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
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損保ジャパン本社(「Wikipedia」より/Rs1421

 国土交通省は、自動車保険の保険金水増し請求問題をめぐり中古車販売大手ビッグモーターを道路運送車両法に基づき調査中だが、ビッグモーターの不正を容認していたとされる損害保険ジャパンが販売する同省職員向け団体保険において、最大で40%にもおよぶ保険料割引を受けていたことがわかった。国交省は直接的に損保ジャパンを監督する立場にはないが、損害保険会社は自動車保険の取り扱いを通じて自動車業界と深い利害関係を有しており、自動車業界を監督する国交省として問題はなかったのが問われている。

 昨年に不正が発覚して以降、沈黙を守っていたビッグモーター経営陣は先月25日、騒動後初となる会見を実施。それから1カ月が経過しようとしているが、同社内で行われていた不正行為に関する報道はあとを絶たない。

 たとえば、車の購入者が代金の約100万円を現金で支払おうとしたところ、店舗の営業担当者から総支払額は変わらないので1年だけローンを組むよう説得され、結果的に120万円を支払う羽目になったり、新品タイヤなど30万円相当のオプションを無償で付けるのでローンを組むよう言われた客が、約束を反故にされオプション分を有償で契約させられたケースがあったという(11日付「AUTOCAR JAPAN」記事より)。

 また、ビッグモーターに車を売却して3カ月が経過しても名義変更の知らせが来ず、使用者も保管場所も変更されていなかったり、売却した車について冠水した過去はないにもかかわらず、冠水した跡があるとして突然700万円の賠償請求訴訟を起こされたり、店舗で売却のキャンセルを告げると店長から罵声を浴びせられるようなケースもあったという(11日付「弁護士ドットコムニュース」記事より)。このほか、中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という信じがたい行為まで横行していたという(9日付「FNN」記事より)。

団体保険の特性

 そんなビッグモーターと深い関係にあったのが損保ジャパンだ。ビッグモーターの店舗を通じて年間数十億円の自動車保険の収益を上げていたとされる損保ジャパンは、不正を行っていたビッグモーターの板金部門(自動車修理部門)などに2011年から計37人に上る出向者を送り込んでいた。昨年の不正発覚を受けて三井住友海上保険と東京海上日動火災保険がビッグモーターの修理工場への、自動車事故を起こした保険契約者の仲介を停止していたなか、損保ジャパンのみが再開し、それによってビッグモーターを窓口とする自社の自動車保険の契約数を増加。すでに金融庁は損保ジャパンに対して行政処分の発令も視野に調査に乗り出しているが、4日発売の週刊誌「フライデー」(講談社)によれば、損保ジャパン社員がビッグモーターの板金部門に対して、損保会社に保険金を水増し請求するために修理車両の傷を深く見せる方法を指南していたという。

 その国交省が職員向けの損保ジャパンの団体保険について、保険料の40%値引きという待遇を受けているというのだ。そもそも団体保険とはどのような保険なのか。保険ジャーナリスト協会代表の鬼塚眞子氏はいう。

「団体保険(団体契約)とは、日本損害保険協会のHPで解説されているように、一定の要件を満たした企業や団体が契約者、従業員や社員が被保険者(保険の対象となる人)として契約する保険をいう。団体契約の最大のメリットは、契約人数に応じた保険料の割引の適用があることだ。団体契約の保険料は、その企業や団体の加入人数、職業危険率などの属性、予想される事故率から算出される。すべての保険商品は金融庁に申請し、認可してもらわなければ発売することはできない。30~40%割引というのは、目を見張る数字かもしれないが、決して突出して優遇している数字ではない。国交省の職員の事故率が低く、複合的に考察した上で算出された割引率だと捉えている。

 損保各社は企業や中央官庁、自衛隊、警察、消防署、地方自治体に対して団体保険を提案しているが、どの保険商品を選択するかは企業・団体側に決定権がある。団体保険は一般の企業や団体でも、所定の要件を満たせば加入することが可能であり、保険担当者は保険会社などにその要件を聞いて、確認することをお勧めしたい」

国交省の見解

 前述のとおりすでに国交省はビッグモーターへ調査に入っており、道路運送車両法違反が認められれば、車検場の指定や工場の認証の取り消し、一定期間の事業停止などの行政処分が下されることになる。その国交省がビッグモーターと深い利益関係にある損保ジャパンから、こうした厚遇を受けることは問題ないのか。行政の歪みにつながるのではないか。中央省庁官僚はいう。

「国民目線でみれば、それだけの恩恵を受けていて公正な調査ができるのかという声があがるのは理解できるし、なぜ昨年に事案が発覚してから今の今まで国交省が動き出さなかったのか不信を抱かれても仕方ない。ただ、今回の団体保険の件でいえば、行政組織のなかで国交省だけが特別に待遇の良い扱いを受けているわけではないし、これだけ注目されている事件だけに、それによって国交省による追及が甘くなるようなことはないだろう。日頃から行政組織は物品の購入やサービス、工事、システム開発、人材派遣などを通じて民間企業と多くの取引を抱えており、そうしないと行政が成り立たないので悪ではない。国交省だって自省で保有する車両を監督対象である自動車メーカーから購入しているだろう。ただ、やはり『割引』など、厚遇を受けているかのような誤解を国民に与えるような取引を民間企業との間で行うことは、自粛の検討の余地があるのでは」

 国交省に聞いた。

――損保ジャパンが国交省の職員向け団体保険において、30~40%程度の保険料の割引を適用しているというのは事実か。

国交省「当省職員向けの案内によれば、損害保険ジャパンを含む損害保険会社が引受保険会社となっている団体保険において、30%~40%程度の保険料の割引が適用されているとの記載があります」

――国交省の職員向けの損保ジャパン団体保険について、保険品目は。

国交省「当省職員向けの案内によると、損害保険ジャパンが引受保険会社となっている当省職員向けの団体保険の保険品目は、入院諸費用保険及び療養補償保険です。また、上記のほか、団体傷害保険がありますが、当該保険については損害保険ジャパン、東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の4社が共同引受保険会社となっております。なお、自動車保険については団体扱保険となりますが、損害保険ジャパン、東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の中から、契約を希望する損害保険会社を選択することとなっております」

――国交省は損保会社の監督官庁ではないものの、損保会社は主力商品である自動車保険を通じて自動車関連業界と深いかかわり合いがあり、その意味で、損保会社が国交省の職員向けに優遇的な商品を販売することは行政の歪みを生むことにつながるとの指摘もあるが。

国交省「団体保険における割引率については、損害保険会社における各種団体保険取扱規定等に基づき、団体の規模や各団体の加入実績、過去の保険金の支払実績に応じて損害保険会社が決定しているということで、国土交通省職員向け団体保険の割引率についても同様のルールの下に各損害保険会社において決定されたものであり、国土交通省を特別に優遇して適用された割引率ではないということを損害保険会社に確認しております」

(文=Business Journal編集部、協力=鬼塚眞子/保険ジャーナリスト協会代表)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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