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小林製薬、インサイダー取引が取り沙汰か…社内協議の直後に株価が大幅下落

文=Business Journal編集部
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小林製薬の公式サイトより

 小林製薬が販売する「紅麹」の成分が含まれた健康食品を摂取し、その後に死亡した人が5人に上るなど(29日午前現在)、同社商品の健康被害が問題となっている。同社が健康被害が確認された旨を公表したのは今月22日であり、同社はその約1カ月半前の2月5日から社内協議を実施。翌6日から同社の株価が大きく下落していることから、同社株式のインサイダー取引があった疑いが指摘されている。

 小林製薬は22日、自社で製造する紅麹原料が含まれるサプリメントを摂取した人から腎疾患などの健康被害が確認されたとし、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」など3商品を自主回収すると発表。コレステロールや血圧を下げる効果があるとされるが、同商品を摂取した人に腎疾患の症状が発症し、一時は人工透析が必要となった人もいることが明らかとなった。29日現在、入院した人は延べ114人、死亡した人は5人、通院者と通院希望者は計約680人となっている。

 小林製薬は紅麹原料の製造量のうち約8割を他の食品メーカーなどに供給しており、厚生労働省は28日、供給先の食品メーカーなど173事業者を公表。同省は全事業者に対し、過去3年間に医師から健康被害が報告された製品があるかなどについて自主点検した上で来月5日までに報告するよう求めている。

 小林製薬の調査によれば、健康被害を起こした可能性がある商品はいずれも同じロットの原料を使用したものであり、昨年4~12月に製造されていた。同社は「想定しない未知の成分が入っていた可能性がある」としており、死亡した5人のうち少なくとも2人が摂取していた商品の製造時期とは異なる。

 同社と厚生労働省は29日、同社のサプリに青カビからつくられる天然化合物「プベルル酸」が含まれていたと発表。毒性は高く抗生物質としての特性があるが、腎疾患を引き起こすのかは不明。検出された原因も現時点で不明であり、同社と厚労省は今後、毒性を評価していく。30日には大阪市と同省が、昨年12月まで原材料となる紅麹を製造していた大阪工場に立ち入り検査を実施した。

インサイダー取引とは

 小林製薬に医師や患者本人から症例の報告が入ったのは1~2月。この時点では計6人の症例が報告され、同社は2月5日、社内で対応を協議し、研究部門に対し原因の調査を指示。一部の紅麹菌株が生産する有毒物質であるシトリニンは検出されなかっため、同社は報告を入れた医師とも面談しながら、紅麹が生成する「米紅麹ポリケチド」やアレルギー反応による症状の可能性などを検証。

 今月に入り、16日には健康被害を起こした可能性がある商品はいずれも同じロットの原料を使用したものであることが判明。同社は18日に緊急対策本部会を開き、21日に消費者庁に一報。22日には消費者庁、厚生労働省と面談を行い、同日中に公表した。

 注目されているのが同社の株価の動きだ。同社株価は昨年11月頃から6500円を超えて推移していたが、同社内で社内協議が行われた2月5日の翌日から下落が始まり、7日の終値は6500円を割り込み6360円に。その後は5900~6100円くらいの間で推移し、自主回収が発表された今月22日以降は4000円台となる日もあるなど低位で推移しているが、公表前から大きく株価が下落し始めていることから、内部情報を知り得る立場にいる関係者が含み損リスク回避のために大量に株を売却した可能性が取り沙汰されているのだ。28日の会見でこの点について質問を受けた小林章浩社長は「当社ではインサイダー情報について教育を行っています。その情報により売買の事前の社内許可制をとっている。インサイダー取引はないものと信じている」とコメントしている。

 インサイダー取引とは、上場企業などの役員や社員が、その企業の株価に重要な影響を与える事実(重要事実)を把握し、その重要事実の公表前に株式などの売買を行うことを指し、金融商品取引法で規制されている。

 インサイダー取引として大きく世間に注目されたのが、2006年の「村上ファンド事件」だ。ライブドアがニッポン放送株を大量に購入する予定があることを知る立場にありながら、その情報を利用してニッポン放送の株を大量に買い付けたとして、村上ファンド代表の村上世彰氏が旧証券取引法違反の容疑で逮捕。2011年に有罪が確定し、懲役2年、執行猶予3年などが命じられた。これを契機に日本ではインサイダー取引に対する意識が高まったが、22年には大手ゲーム会社スクウェア・エニックスの元社員で著名なゲームクリエイターがインサイダー取引事件に関連して逮捕されるなど、事件は絶えない。

「現段階ではなんともいえない」

 金融業界関係者はいう。

「現段階ではなんともいえない。小林製薬は2月9日に23年12月期決算が増収増益(純利益ベース)、今年度も増収増益見通しだと発表しているので、下げ要素は薄い。ただ、理由はよくわからないが、同社と同じ生活用品メーカーである花王やP&Gなども2月7日あたりから株価が右肩下がりになっており(その後は持ち直し)、同業界の株価に影響を与える何らかの材料がこの時期に生じていたのかもしれない。

 また、これだけ大幅な下落は、かなりの量の売却がないと生じないため、特定の個人によるインサイダー取引というよりは、生活用品市場全体に一定のインパクトとなるうような動きが生じ、それによって下がったと考えるほうが自然」

 別の金融業界関係者はいう。

「社内では対応について協議が始まり研究部門に調査の指示が出ており、会社としての対応が本格的に始まっていたので、健康被害の件を知り得た社員はそれなりの数に上るはず。加えて、2月上旬の時点では病院や摂取した本人から同社に報告が入っていたので、その周辺の人、家族を含めて社外にも情報を把握していた人はいた。こうした社内外の人から情報が口伝いに広まって、同社の株を大量保有していた人の耳に入り売却がなされたという流れは考えられなくはないが、可能性としては高いとはいえないだろう」

(文=Business Journal編集部)

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