「ブレスケア」や「ブルーレットおくだけ」などで知られる小林製薬は22日、同社が製造する紅麹(べにこうじ)原料が含まれるサプリメントを摂取した人から腎疾患などの健康被害が確認されたとし、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」など3商品を自主回収すると発表した。同社といえば、全社員が商品のアイディアなどを積極的に提案する「全社員提案制度」というユニークな制度を商品開発に取り入れるなど「ヘンな会社」としても有名だが、いったいどんな企業なのか。業界関係者の見解を交え追ってみたい。
問題となっている紅麹原料は小林製薬が製造するもので、自主回収の対象となったのは機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」など3つの商品。コレステロールや血圧を下げる効果があるとされるが、同商品を摂取した男女13人に腎疾患の症状が発症し、一時は人工透析が必要となった人もいる。同商品は2021年に発売され、今年2月までに106万袋が販売されている。
一部の紅麹は「シトリニン」というカビを発生させる可能性があり、過去には欧州で紅麹由来の成分を含むサプリの摂取との関連が疑われる健康被害が報告されており、日本の食品安全委員会は「EUは、一部の紅麹菌株が生産する有毒物質であるシトリニンのサプリメント中の基準値を設定しました」と注意を喚起していた。小林製薬の商品からはシトリニンは検出されていない。
同社は紅麹原料の製造量のうち約8割を他の食品メーカーなど約50社に供給。同社の紅麹を使用していた宝酒造(対象製品:「松竹梅白壁蔵『澪』PREMIUM<ROSE>」)、紀文食品(「イカの塩辛」)、ZERO PLUS(「悪玉コレステロールを下げるのに役立つ濃厚チーズせんべい」)、豆福などが相次いで商品の自主回収を発表している。
「初めて健康被害の報告が会社に入ったのが今年1月であり、症例の公表と自主回収の発表まで約2カ月かかっているというのは、対応が遅いと感じる。ただ、小林製薬の発表によれば、分析の結果、製造過程において意図しない未知の成分が含まれていた可能性があるとのことなので、レアケースといえる。もし原因がシトリニンであったとすれば、すぐに自主回収の判断ができただろうが、原因が特定できないため時間がかかったとみられる」(食品メーカー関係者)
全社員提案制度
小林製薬といえばユニークな企業として知られる。「あったらいいなをカタチにする」というキャッチコピーを掲げる小林製薬は、「アイボン」「アンメルツ」「のどぬ~る」などの医薬品のほか、「ケシミン美容液」などのスキンケア商品、「サラサーティ」などの衛生雑貨品、「お部屋の消臭元」などの芳香・消臭・脱臭剤、「ブルーレットおくだけ」などのトイレ用芳香・洗浄剤、「かんたん洗浄丸」などの住居用洗剤、「熱さまシート」などの便利商品といった、消費者の生活に密着する幅広い分野にわたり数多くのアイディア商品を販売。経営理念として
<私たちは、一人ひとりの暮らしの中の見過ごされがちな「お困りごと」を発見し、今までにない「アイデアや技術」によって解決することで、健康で快適な生活の実現や、社会での活躍をサポートします>
と謳っている。
こうした商品を生み出しているのが、「全社員提案制度」という制度だ。社員は誰でもアイディアを提案できる仕組みが整っており、アイディア創出数は年間5万件以上にのぼる(同社HPより)。
「競合他社が進出していないブルーオーシャンのニッチ市場に積極的に新商品を投入するタイプの企業。高い成果をあげた社員たちを社長との食事会に招待したり、社内表彰を頻繁に行ったりして社員のモチベーションを高めているようだ。いい意味で『ヘンな企業』といえ、社内の風通しの良さが同社の強みにつながっている」(経営コンサルタント)
そんな同社の業績は好調だ。2023年12月期の連結決算は、売上高は前期比4%増の1734億円、営業利益は同3%減の257億円、純利益は同2%増の203億円。売上高営業利益率15%前後を維持する高収益企業としての顔を持つ。
(文=Business Journal編集部)