料金の高額化や予約システムの複雑化が指摘されている東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド・東京ディズニーシー)。12日放送のニュース番組『Live News イット!』(フジテレビ系)で「入れるのは一握りの人間」「ついていけない」「行きたいけど、高い」といった街頭インタビューでの声が紹介され、ネット上では「一般の人々から酷評されている」として話題を呼んでいる。現在の東京ディズニーリゾート(R)の予約システムや料金はどうなっているのか。また、長い待ち時間を回避する方法はあるのか。現状を探ってみたい。
ここ最近の東京ディズニーRをめぐる最もホットな話題といえるのが、今月6日に東京ディズニーシー内にオープンした新エリア「ファンタジースプリングス(FS)」だろう。投資額は約3200億円と2001年の開業以来、最大規模の開発で、映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の世界が再現されている。複数のアトラクションがあり、それぞれの映画の世界観を体験できる。
FSは「入場のハードルの高さ」も注目されている。通常のパークチケットだけでは入場できず、パーク入園後にスマートフォンの東京ディズニーリゾート・アプリの「スタンバイパス」(無料)でFS内の利用したい施設・時間帯を選択し、パスを取得する必要がある。同時に複数のアトラクションのスタンバイパスを取得することはできない。抽選制の先着予約のため、FSオープン当日には開園前の早朝から入園ゲート前には長蛇の列ができた。
有料の手段としては「ディズニー・プレミアアクセス(DPA)」がある。短い待ち時間で希望する施設を利用することが可能であり、こちらもパーク入園後にアプリ上で使用する施設と時間を選択するという流れ。発行数に限りがあるため、売り切れとなる場合がある。FS内の施設の料金の一例としては「アナとエルサのフローズンジャーニー」「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」はそれぞれ2000円となっている。他のアトラクションを購入する場合、購入から60分後、もしくは購入したDPAの利用開始時刻のいずれか早いほうの時間を過ぎてから購入するかたちになる。
このほか、確実にFSに入園する方法として「1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジック」があるが、6つのディズニーホテル宿泊者だけが購入可能となっており、『イット!』では、ファンの間で「バケパ(バケーションパッケージ)」と呼ばれる2日間分のパスポート付き宿泊プランを利用した人が取材に応じ、一人あたりの費用が10万円だと語っている。
現在の予約システム
現在の東京ディズニーRのチケットシステムはどうなっているのか。
まず、入場用の「パークチケット」である「1デーパスポート」を購入する必要がある。価格変動制で7900~1万900円(4~11歳は4700円~5600円、12~18歳は6600円~9000円)となっており、来客数が多い土曜日は1万900円になるケースが多い。2カ月前からの販売となっており、公式サイトか東京ディズニーリゾート・アプリから購入する。ちなみに、パークチケットだけでもアトラクションを利用することは可能だが、行列に並んで長時間待ったり、開園前から入場ゲート前に並んで開園と同時にお目当てのアトラクションまで“ダッシュ”する覚悟が必要だ。
公式アプリで無料の「東京ディズニーリゾート40周年記念プライオリティパス」を取得し、そこから利用したい施設を選択し、指定された時間のパスを取得することで、短い待ち時間で施設を利用できる。ただ、自分で利用時間を選ぶことはできず、数に限りがあるので希望のアトラクションを利用できない可能性がある。他の施設を取得する場合、取得から120分後もしくは取得した同パスのご利用開始時刻のいずれか早いほうの時間を過ぎると取得することができる。同じ施設を再び取得する場合、取得した同パスの利用後、もしくは利用終了時刻以降となる。
このほかに無料で入手できるものとしては前出のスタンバイパスがあるが、前述のとおり抽選制の先着予約となっている。
一方、有料のDPAを取得すると、時間や入場時刻を指定して予約でき、短い待ち時間で利用できる。一例としてアトラクションの「スプラッシュ・マウンテン」は1500円、「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」は2500円となっている。
「『現地へ行けばなんとかなるだろう』と考えて行っても、現地ではパークチケットは販売されていないので、入場すらできない。当日分のチケットが売り切れになっていなければスマホのアプリで購入して入れるが、行く日を決めて数週間前に購入してくのが常識。当日に乗りたいアトラクションや見たいショーを予め決めて絞り込んでおき、できるだけ朝の早い時間に入園してすぐにアプリで予約するのが無難」(ディズニーRファン)
現地に行って5500円の「1デーパスポート」を買い、並びさえすればアトラクションを利用することができた、かつての東京ディズニーRを知る人たちからは「複雑化した」と捉えられるかもしれないが、料金の高騰もしばしば指摘される。かつては待ち時間を短縮してアトラクションなどを利用できる無料の「ディズニー・ファストパス」があったが、2020年に休止されたのちに廃止。それに代わり現在はスタンバイパスとDPAが用意されている。01年に5500円だった「1デーパスポート」の価格は年々値上がりし、21年3月に価格変動制が導入された時点で大人料金は休日が8700円、平日が8200円。21年10月1日からは7900円、8400円、8900円、9400円の4段階となり、今年10月からはさらに9900円と1万900円が追加され6段階に。基本的に土曜日は1万900円となることが多い。
その間、来場者一人当たりの売上高は年々上昇。2000年度の9236円から徐々に上昇し、コロナ禍による移動制限が緩和された21年度は前年度から急伸し1万4834円に。そして23年9月中間期は1万6566円まで伸びた。
「オタク&金持ちだけが楽しめる場所」
こうした東京ディズニーRの変化について、『イット!』では街の人々の声として
「そもそもエリアに入れるのは一握りの人間だけ」(30代女性)
「私には無理」(70代女性)
「いろいろと聞いてはいるんですけど、ついていけない」(40代女性)
「最近いろいろ予約の仕方とかも変わっちゃたりして、全然とれない。わかんない」(60代女性)
「行きたいけど、高い」
といった感想が紹介されていた。これに対しネット上では以下のような声があがっている。
「ディズニーは誰でも楽しめる場所。からオタク&金持ちだけが楽しめる場所になってる」
「昔のディズニーにしてほしい」
「ゲート入って、景色を見てウワーってなってたのから、とにかくスマホにかじりつかなきゃって、花壇もワールドバザールも楽しめてないのは、正直しんどい」
家族4人で最低でも6~7万円?
こうした声について、デジタルマーケティング会社のプロデューサーはいう。
「大前提として、運営会社であるオリエンタルランドの前年度決算の純利益は過去最高となっており、経営的には現在のシステムや各種施策は大成功という評価になる。現在の仕組みが導入された目的は、かつてひどかった園内の混雑とアトラクション利用時の長い行列での待ち時間の解消であり、それらが以前より大きく解消されたことを歓迎しているファンも多く、実際にファンは昔も今も通い続けている。客側にとっても行列待ちから解放されれば、レストランで休んだり買い物を楽しむ時間が確保できるので、トータルで出費が数千円高くなっても、今のほうがよいと感じる人もいるだろう。レストランもかつては行列で30分待ちくらいは当たり前だったが、モバイルオーダーが導入されて、並ばずに済むようにもなるなど、利便性は向上している。
チケットや予約のシステムも、今の20~40代、およびスマホを使いこなせる50~60代にとっては全然ハードルは高くない。とはいえ、ハードルが高くなったと感じる人も多いだろうから、結果的に『熱心なファンは行くけど、それ以外の人たちは足が遠のく』という状況が生じているが、アミューズメントパークである以上は足しげく通ってくれるファンを優先するのは当然。ファンにとっては『多少高くなっても混雑が減って、行列に並ばずにアトラクションに乗れるようになった』というのは喜ばしいことだろう。
金額については、確かに子どもがいる家族が行くにはハードルが高い場所にはなった。1日いれば4人で最低でも6~7万円、高いと10万円くらいは覚悟しなければならない。だが、小旅行感覚で1~2年に1回くらいは行ってもいいかなと許容する向きは一定数いるだろうし、以前からディズニーRに行ける行ける家族4人世帯というのは一定の年収以上に限られていたともいえ、その点はあまり変わっていないような気もする」
ディズニーRファンのIT企業社員はいう。
「仲の良いファンの子同士でグループで行って、たとえお目当てのアトラクションに乗れなくても“今日は予約が取れた・取れない”“どうすればより効率的に回れるか”などとああだこうだ話をしたりして、園内での体験そのものが楽しいという面があるし、平日17時以降のウィークナイトパスポートだと5000円くらいで入れるので、それを使って安く楽しく方法もある。ファンにとっては2~3カ月に1回、満喫できるとなれば1万円ちょっとの出費は惜しくはないし、結局のところファンは行き続けている。ただ、設備面やサービス面含めていろいろと配慮はされているものの、小さな子どもがいる家族にとってはハードルが高いのが現実だとは思うが、それはディズニーRに限った話ではなく、旅行や他の商業施設に共通したものではないか」
ディズニーRのアトラクションでは、例えば先にお母さんが利用している間にお父さんが子どもの面倒をみて、その後にお父さんが行列に並ばずに利用できる「交代利用サービス」のように、小さな子どもがいる家族連れに配慮する各種サービスも用意されている。
(文=Business Journal編集部)