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小・中学校の教員「平均給与が月38万円」が割に合わない…残業150時間も

文=Business Journal編集部
小・中学校の教員「平均給与が月38万円」が割に合わない…残業150時間もの画像1
「gettyimages」より

 政府が公立学校の教員不足対策として月給の上乗せ支給制度「教職調整額」の引き上げを検討していることを受け、公立学校教員の給与水準が注目されている。 総務省の「令和5年 地方公務員給与の実態」によれば、「小・中学校教育職」の平均基本給(扶養手当・地域手当含む)は月額38万1578円となっており、民間企業のそれを上回っているが、現場の教員からは「事実上のサービス残業が多すぎて、まったく割に合わない」という声も聞かれる。果たして公立学校教員の給与額は妥当といえるのか。現役教員の見解を交えて追ってみたい。

 公立の小学校・中学校・高校の教員には残業代は支給されない。その代わりに月給の4%相当を上乗せして支給する制度「教職調整額」があるが、「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない」(5月13日放送のNHKニュース番組)と問題視されてきた。文部科学省は教職調整額を月給の13%相当に引き上げ、学級担任への手当を月額3000円、管理職手当を月額5000~1万円増額することを検討しているが、背景には教員不足の深刻化があげられる。

 2023年度の公立学校教員採用選考試験では小学校教員の競争率(採用倍率)は2.3倍と過去最低を更新、中学校は4.3倍で1991年度の過去最低倍率と0.1ポイントの差となった。採用倍率には地域差もみられるが、東京都教育委員会が実施した24年度の小学校の教員採用選考は1.1倍と過去最低。受験者数は10年前より半減している。

 公立学校教員の志望者が減っている要因の一つが、残業代なしでの長時間におよぶ勤務が常態化していることだ。21年に名古屋大学の内田良教授らが全国の公立小学校の教員466名、公立中学校の教員458名を対象に行った調査によれば、1カ月の平均残業時間は100時間以上におよぶという。また連合総研が22年に発表した報告によれば、教員の勤務日の労働時間は平均12時間7分で、週休日の労働時間を合わせると1カ月の労働時間は293時間46分であり、時間外勤務は上限時間の月45時間を上回り、さらに過労死ラインを超えているとしている。

毎日朝7時30分から夜11時まで働く

 平均給与が38万円ほどというのは、実質的な労働時間や負荷を踏まえると割に合っているといえるのか(以下、特に記載がない「 」コメント部分の発言主は公立小学校・中学校教員)

「朝のホームルームから放課後の部活指導や校内分担業務、帰宅後の授業の準備などを含めると、毎日朝7時30分から夜11時まで働いています。これに土日の部活指導や研究授業の準備なども加わるので、部活指導に多くの時間を割かなければならない教員の場合は月の残業時間が150時間を超えてきます。そこまで部活動が大変ではなくても残業時間が月100時間を超えるケースはザラです。教職調整額が13%に引き上げられても、月のいわゆる定時時間内の労働時間を一日8時間×20日=160時間と仮定すると、その13%で約20時間分にしかなりません。これでは、どう考えても割に合いません。教師のなり手不足という意味では、志望者が減っているのに加え、民間企業に転職したり、激務で心身不調になり休職してそのまま退職する人も少なくないです」

 こうした激務で心身が不調となり休職する教員の数は年々増加傾向にある。文科省「令和4年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、精神疾患による病気休職者数および精神疾患による1カ月以上の病気休暇取得者は1万2197人となっている。

「毎日、多くの生身の人間である生徒と向き合い、予測不能の出来事に対処していくというのは想像以上に心身が疲れます。休職にいたるパターンとしては、日々の授業や部活指導、校内業務に追加で業務が発生し、いろいろとうまくいかないことや生徒のトラブル、保護者対応などが重なり、さらに長時間労働が強いられるなかでメンタルと体に限界が来てしまうということが多いです。長時間労働が続くと私生活が乱れてしまうので、社会人になって初めて一人暮らしをするような若い教員は特に大変です。また、40~50代のベテラン教員でも休職する人はいます。子どもの行動特性や価値観というのは常に変化しているので、昔のやり方が通用しなくなるということは普通にあるので、ベテラン教員がそれで自信を失ってしまうこともあるでしょう」

「いつまでも教員の労働環境の問題が解決されない大きな原因は、厚労省が教員の労働実態を正しく把握していないためです。長時間残業をそのまま申告すると教育委員会から理由の報告を求められたり目をつけられたりして、報告書の作成など余計な手間が増えるので、学校内の暗黙の了解で教員が労働時間を過少に申告するということが広く行われています。その結果、『長時間のサービス残業は存在しない』ということになってしまっています。残業をしたら、やった分だけ残業代が支給され、一定の時間以上の残業は禁止という民間企業では当たり前のことが公立学校の世界にはないのです。そんなところに就職したいという人が少なくなるのは当然です」

学級崩壊の問題

 学級崩壊への対応も教員の休職者増加を招いているという。

「学級崩壊が増えているという客観的なデータはないですが、現場の感覚としては事実上の学級崩壊状態にあるクラスは増えていると感じます。授業中に静かに席に座っているということができない子どもが増えていますが、たまたまクラスのなかに問題行動やイジメを繰り返す生徒が多かったり、落ち着きのない生徒が多かったり、生徒のタイプの幅が広かったり、教員のスキルが未熟だったりと、学級崩壊の原因はさまざまで、かつ一つではなく複合的な要因が重なることで生じます。今ではクラスの生徒たちがグループLINEでつながっていることもあるので、生徒たちがイタズラ的に一致団結して担任の先生を困らせるということもあると聞きます。そうなると教員はお手上げ状態となります。

 学級崩壊状態のクラスがあると、その担任に対して他の教員がアドバイスやサポートをして学校全体で解決しようと動くことになりますが、他の教員も自分の業務だけで手いっぱいだったりするので、十分な協力を得られずに心身に不調をきたし休職してしまうこともあります。また、いくら学校全体で解決しようとしても、“こうすれば学級崩壊が止まる”というマニュアルがあるわけではなく、原因がよく分からないということもあります。担任教員は裁判官や警察官と違って何か権限を持っているわけではないので、なかなか難しい部分があります。子どもだけではなくて保護者の価値観も多様化しているので、すべての保護者たちからオーソライズを得られて、納得を得られ対処をするというのも現実的ではありません」

「給与が割に合わないとはいえ、民間企業の平均よりは上で、ボーナスも支給され、福利厚生は手厚く、問題を起こさない限りは定年までクビになることはないという点に魅力を感じて、教員を続けている人は少なくありません。ですが、長時間労働が続くとどうしても心身に変調が生じるものですし、教員という職業に明るい将来を描けなくなれば続けるのは難しくなります。今では民間企業の給与水準が上がっており、さらに“ホワイト企業”が増えていると聞くので、教員の志望者が減ったり離職者が増えたりする流れは、もう止められないのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部)

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