三菱UFJ銀行が「Sansan」導入で業務時間を年3万時間も削減できた理由…変わるメガバンク

●この記事のポイント
・三菱UFJ銀行が「Sansan」を活用し、営業担当者の業務時間を年間3万時間も削減
・有効商談につながるセミナーの参加者も5倍に増加
・SalesforceとSansanの連携で、最新情報に基づく提案の強化を推進
三菱UFJ銀行が営業DXサービス「Sansan」を活用し、営業担当者の業務時間を年間3万時間も削減することに成功した。有効商談につながるセミナーの参加者も5倍に増加したという。Sansanは利用企業数が1万社に上り、法人向け名刺管理サービス市場では圧倒的なシェア1位であるが、日本を代表するメガバンクである三菱UFJ銀行だけに、営業支援システムを自前で開発したり、大手ベンダのサービスを導入してもおかしくはない。なぜ同行はSansanを導入したのか。そして、どのように活用することで高い成果を生んだのか。Sansan株式会社に取材した。
●目次
名刺情報や接点情報を一元管理する仕組みを構築
三菱UFJ銀行は好業績に沸いている。三菱UFJフィナンシャル・グループの2025年3月期の連結純利益は前期比25%増の1兆8629億円と2期連続で最高益を更新。今年度(26年3月期)は同2兆円に達する見通しを示している。日銀の金融政策が正常化に向かい金利が上向く見通しとなっていることも、業績を上振れに向かわせる。
Sansanは、名刺やメールといった接点から得られる情報を正確にデータ化して全社で共有するデータベースを構築できる営業DXサービス。あらかじめ搭載された100万件以上の企業情報や商談などの営業活動の情報を一元管理することで、ビジネス機会の創出や売上の拡大を図ることができるという。三菱UFJ銀行はそのSansanをどのように活用して、営業担当者の業務時間を年間3万時間削減することに成功できたのか。Sansan株式会社は次のように説明する。
「三菱UFJ銀行様では従来、顧客の連絡先を担当者が属人的にアナログ管理しており、情報検索に時間を要していたほか、モバイル端末からの閲覧もできず外出時や在宅勤務時に迅速な対応が難しい課題を抱えていました。Sansanの導入により、名刺情報や接点情報を企業の情報資産として一元管理する仕組みを構築したことで、顧客の連絡先の検索時間を削減し、外出時や在宅勤務時にも迅速に情報へアクセスできる環境を実現しました。その結果として、年間3万時間の業務時間削減を実現しています」
有効商談につながるセミナー参加者が5倍増となった要因は何か。
「従来のデジタルマーケティング施策では、利用できる顧客データが限られていたことから、適切なターゲットに最適なタイミングでアプローチできず、商談の機会を逃してしまう課題を抱えていました。Sansanの導入により、銀行側が持つ顧客データと名刺情報・接点情報を統合し、企業名や役職、所属部門といった詳細情報を把握でき、より関心度の高いターゲットを的確に絞り込めるようになりました。また、Sansanでは人事異動情報をリアルタイムで反映できるため、最新の担当者への迅速なアプローチも可能となりました。結果、オンラインセミナーのメール配信ではURLのクリック率が大幅に向上し、有効商談につながる参加者を従来比 5 倍に増やすことができました」(Sansan)
Salesforceを導入し、Sansanとの連携を開始
三菱UFJ銀行は4月からSalesforceを導入し、Sansanとの連携を開始したが、それによってどのような機能強化・サービス内容の拡充が実現するのか。
「従来、顧客データはSansanを含めて複数のシステムに分散しており、同一顧客でも新旧情報が社内に混在する状態でした。情報更新や収集が負担となり、提案準備に時間がかかるなど、全社でデータを効率的に活用できていませんでした。2025年4月よりSalesforceを導入し、Sansanとの連携を開始したことで、行内外の情報を一元化することで営業担当者が顧客をより深く理解し顧客に寄り添った提案をすることが可能になります。部門を横断した担当者間でのスムーズな情報共有や、データメンテナンスの効率化、最新情報に基づく提案の強化を進め、営業力と顧客体験の向上を目指していきます」
大手銀行関係者はいう。
「従来、銀行は個人や法人の極めて機微な情報を扱うという特性から、情報管理が厳重に行われ、情報を行内から持ち出すことはもちろん、外から閲覧・アクセスするということが許されにくく、強い制限がかけられてきました。また、各支店では取引先ごとに担当者が明確に決められ、取引先の連絡先は担当者しか把握していないというのが一般的でした。ですが、どの銀行も従来型の融資業務が先細るなかで、個人などの資産を総合的に管理・運用するウェルス・マネジメント事業に力を入れるようになり、新規顧客の開拓やトータルサービスの提案のために取引先情報の共有と有効活用が不可欠となり、Sansanのような仕組みの活用が必要になってきています。
これまで銀行はシステムの自前主義の姿勢が強かったですが、すでに普及している既存のサービスであれば低価格かつ短期間で導入が可能となるので、こうした動きは銀行業界でも広まっていくのではないでしょうか」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)