メルカリがインドに開発拠点を設置して生まれた莫大なメリット…実は支障はほぼなかった

●この記事のポイント
・メルカリは2022年にインドに技術開発拠点を設立し、規模を拡大させている
・メルカリには約55カ国からメンバーが集まっており、外国籍社員比率はエンジニア組織では56.8%
・エンジニアの採用面で大きなメリット。母数が大きく、スキルの高いエンジニアが多い
高度ITエンジニアの輩出国として知られるインド。グーグルやマイクロソフトをはじめとする世界的な大手テック企業では優秀なインド人エンジニアが数多く働き、インドに開発拠点を置くIT企業も多いなか、日本のフリマアプリ大手・メルカリは2022年にインド南部ベンガルールに技術開発拠点として「グローバル・センター・オブ・エクセレンス(GCoE)」を設立し、規模を拡大させている。その狙いやメリット、そして日本とインドにまたがって支障なく開発を進めるための取り組みなどについて、同社に取材した。
●目次
エンジニアの人数と質という面でインドが魅力的
メルカリは2018年にはじめてグローバルで大規模な新卒採用を実施し、このときの新卒採用のエンジニア50人の内、44人が外国籍で、インド国籍は32人だった。同年にはインドの科学技術系大学トップ、インド工科大学の出身者を29名採用し、その後も同大学の学生を採用している。メルカリには約55カ国からメンバーが集まっており、外国籍社員比率は29.4%であり、エンジニア組織では56.8%に上る(2024年度)。インドのGCoEには24年6月末時点で65名が在籍しており、今後も拡大予定だという。
インドにシステム開発拠点を設置した理由について、メルカリ 執行役員 VP of India Operationsの梅澤亮氏はいう。
「海外拠点の設置先として欧州やアジア など複数の国を検討するなかで、エンジニアの人数と質という面でインドがもっとも魅力的であったというのが理由です。弊社では、その前からインド工科大学の新卒学生などを採用して日本オフィスに勤務してもらっており、インド人エンジニアのレベルの高さを把握していたという面も大きいです」
GCoEで開発するのは、主にメルカリの国内向けサービス。インド人を採用して日本のオフィスで勤務してもらうという形態も選択肢としてあるなか、なぜ、メルカリのほうがインドに“出向く”かたちで開発拠点を設置したのか。
「インドの方々は家族のつながりを重要視されるので、日本に移住してもらうハードルを解消することで、より多くの優秀なインドの技術者の方々に弊社に入っていただくという目的もあります。これは日本人でも同様ですが、結婚やお子さんの誕生から間もない方に、海外 に移住していただくというのはハードルが高いので、その点は大きいです。
採用面では、日本と比較してインドは圧倒的に母数が大きいというのもメリットです。米国のテック企業で多くのインド人エンジニアが活躍していることからもわかるとおり、インド工科大学をはじめレベルが高い大学もあることからスキルの高いエンジニアがたくさんいるため、言語要件さえ外してしまえば採用がしやすいという点は大きいです」
大きなハードルはない
日本のオフィスでチームメンバーが集まって開発を行うのと、国をまたいでメンバー同士が離れた場所で開発を行うのとでは、勝手が違ってくる面もあるのではないか。何か工夫していることはあるのか。
「弊社は以前から海外人材の採用を進めてきたことで約55カ国から社員が集まっており、特にプロダクト開発組織 では英語化が進んでいるため、言語に関する障害はほぼありません。日本とインドの時差は3時間半くらいですので、この点も問題ないです。また、22年にGCoEを開設する以前からコロナの影響でリモートワークが進んで社員はリモートで働くことに慣れていたので、その点に関しても大きなハードルはありませんでした。
開発の進め方という面では、日本でも複数のチームが連携してプロジェクトを進行させていくケースが多いですが、それと同様に基本的にはインド拠点のチームと日本拠点のチームが協力して進めていく形態なので、大きな違いはありません。また、仕事を進める上でコミュニケーションの面で支障が生じるようなことも特にありません。
しいて難しい点といえるようなことを挙げるとすれば、インドではメルカリのサービスを使えず、またメルカリのようなサービスは浸透していないので、現地のエンジニアたちに“どのような使われ方をするサービスなのか”を深く理解してもらうという点は少し時間がかかるかもしれません」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











