AI翻訳・DeepL、東証プライム上場企業の半数以上が導入の理由…業界特化型の高精度が強み

●この記事のポイント
・DeepL、36言語に対応、228の市場で有償版が利用されており、世界の企業・政府機関合わせて20万社以上に採用されている
・独自開発のLLMと7年以上の専用データ、および1,000名以上の言語専門家による人間チューニングが特徴
・製造、自動車、製薬、法務、IT など主要業界向けに、事例を交えた導入ガイドやテンプレートを提供する計画
AI翻訳ツールの利用が拡大し、新たなサービスが次々と登場するなか、日本では東証プライム市場上場企業の半数以上が利用しているのがDeepLだ。2017年という早い段階でAI文書翻訳サービスを始め、市場では草分け的な存在でもあるDeepLは、現在は36言語に対応。世界228の市場で有償版が利用されており、世界の企業・政府機関合わせて20万社以上に採用されている。7月にはビデオコミュニケーションツール「Zoom」でリアルタイム翻訳機能を使えるようにすると発表。独自のLLM(大規模言語モデル)を開発し、各業界に特化した製品を強みに顧客網を広げている。新興勢が次々と参入する日本市場におけるシェア拡大に向けた戦略について、DeepLジャパンに取材した。
●目次
多言語コミュニケーションの効率が5~6倍に改善
前述のとおり日本では多くの大企業が導入しているが、導入企業では具体的にどのような効果が出ているのか。DeepLジャパンは次のように説明する。
「具体的な導入事例としては、パナソニックコネクト様がDeepLを活用し、多言語コミュニケーションの効率を5~6倍に改善したほか、日立産機システム様では、PowerPoint資料の翻訳時間を2〜3日から1日に短縮するなど、翻訳品質の向上と業務効率化に大きく貢献しています。また、NEC様ではMicrosoft Teamsと連携した音声翻訳ソリューション『DeepL Voice』の実証導入が進められており、グローバル会議におけるリアルタイム翻訳の活用が期待されています。さらに、東京都教育委員会では、都立高校における英語教育や教職員の業務支援を目的にDeepLの翻訳・ライティング機能が導入され、教育現場でのAI活用の先進的な取り組みとして注目を集めています」
AI翻訳サービス市場では新規参入が活発化するなか、DeepLのサービスの強み・特徴は何か。
「翻訳品質の高さ:独自開発の大規模言語モデル(LLM)と7年以上の専用データ、および1,000名以上の言語専門家による人間チューニングで、競合比2~3倍少ない編集量でご利用いただけます。
カスタマイズ性:企業用用語集(Glossary)を使い、自社独自の表現や業界用語の一貫性を維持可能です 。
豊富な製品ラインナップ:テキスト翻訳(DeepL Translator)、AIライティング支援(DeepL Write)、リアルタイム音声翻訳(DeepL Voice)を提供し、一気通貫で『書く』『話す』を支えます 。
エンタープライズ対応:ISO 27001/SOC2 Type 2取得の堅牢なセキュリティ、SSO/チーム管理/利用状況レポートなど管理機能を備え、機密性の高い業務にも安心してご利用いただけます」
シェア拡大に向けた施策
DeepLは2023年に日本法人を設置しているが、今後の日本市場におけるシェア拡大に向けた計画・施策について、同社は次のように説明する。
「パートナー連携強化:新規チャネルパートナーやシステムインテグレーターと協業し、API 経由での大規模展開を支援します。
業種特化ソリューション:製造、自動車、製薬、法務、IT など主要業界向けに、事例を交えた導入ガイドやテンプレートを提供し、業務効率化を推進します。
カスタマーサクセス:専任の顧客担当者による24時間×365日サポート、定期トレーニングやオンボーディングセッションで利用促進を図ります。
ローカル開発・研究投資:日本語特有のニュアンスや敬体・常体の対応精度向上に向けた研究開発を継続し、市場ニーズに合わせた機能拡張を行います」
現在、AI翻訳サービスをめぐっては低価格の新規参入組も増えており、かつ米国の大手IT企業が実質無料でサービスを提供したりと、市場競争が激しくなってきているが、そうしたなかで、どのようにシェアを拡大させていく戦略を描いているのか。
「DeepLは、単なる価格競争ではなく、『品質』と『信頼性』による差別化を重視しています。特に企業向けでは、正確性が求められる法務・金融・製造などの分野で、DeepLの高精度な翻訳が強みを発揮しています。また、価格面でもサブスクリプション+従量課金モデルを採用し、エンタープライズ向けにはボリュームディスカウントも提供した柔軟な価格体系と競争力のある価格設定で、多様な顧客ニーズに対応しています。生成AIとの共存を見据えた機能強化や、NVIDIAとの連携による技術基盤の強化など、長期的な競争力の確保にも注力しています」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











