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電話対応から自治体窓口まで。音声AIが切り拓く“DXが届かない領域”の人手不足解消

2025.11.11 2025.11.10 23:16 企業

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 2025年10月30日、「声で世界をつなぐ」をミッションに、音声をユーザーインターフェースとした“VoiceUI”を手掛ける株式会社Verbexは、日本における本格的な事業展開に関する発表を行った。

 Verbexは2017年、バングラデシュで創業し、現在も日本とバングラデシュのメンバーで音声AIのプラットフォーム開発に取り組んでいる。
 スタートアップでありながら、創業から8年と音声AIをプロダクトやソリューションとする企業としては歴史が長く、長年研究を続けてきた音声に関する技術の優位性や各国で取得済みの特許などが強みだ。
 2022年にAIが登場し、音声をインターフェースとするソリューションの精度が飛躍的にアップしたことを受け、2024年より日本語音声AIの高度化に本格的に着手した。

AI特有の違和感を排除した自然な会話

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 VerbexのVoiceUIの武器は、人間と遜色ない自然な会話だ。
 コールセンターを想定したデモンストレーションでも、まるで人間と会話しているかのような自然な会話が体感できた。 
 声の抑揚や会話の間なども、人間が普段行う会話と変わりなく、対話者の方言などにも対応できる。AIが話している途中に、対話者が会話を被せても、自然な流れを崩さずに会話することが可能だ。
 とくに、会話で生じる間が日本語では1秒、ベンガル語では0.6秒空くことで対話者が違和感を抱くという。VerbexのVoiceUIは言語に合わせ、対話者が違和感や不快感を持たない間を持って会話ができることも強みだ。
 実際に体験すれば、AIと会話していると気がつかない対話者もいるだろう。

 VerbexのCEOである森下将憲氏は、
「今後は、AIの声により感情的な抑揚がつくことでクレーマー対応が可能になる、会話のピッチを合わせることで老人も聞き取りやすくなるなど、さらなる進化と応用が可能になる」
と話している。

強みは音声AIモデルと活用アプリケーションの一体化

 圧倒的に自然な会話のほか、VerbexのVoiceUIには、
● オンプレミス環境での運用が可能
● 運用コストの低さ
などの強みもある。

 自然な会話やオンプレミスへの対応を可能にしているのが、Verbexが音声AIモデルとそれを活用するSaaSなどのアプリケーション両方を自社で開発しているという点だ。
 音声AIを活用したアプリケーションを開発する企業の多くは、他社の音声AIモデルを活用している。Verbexが、手間のかかる音声AIモデルを開発できたのには、創業以来続けてきた音声技術の研究があったからに他ならない。

 音声AIモデルとアプリケーションを一体化することで通信が高速化し、レスポンスの遅延が減るため、会話の間やタイミングが自然になる。
 また、音声AIモデルを自社開発していることでLLM(大規模言語モデル)そのもののトレーニングが可能になるため、OpenAIなどのLLMを活用していても、国内にサーバーを置いたオンプレミス環境でも運用ができる。これによって、クラウド環境での運用が難しい官公庁や自治体においても、VoiceUIの導入が現実的な選択肢となった。

 コストの低さに寄与しているのは、日本とバングラデシュのメンバーがチームとなっている点だ。
 バングラデシュではエンジニアのコストが日本の5分の1と低いため、現在、1分100円(インバウンド、アウトバウンドともに同価格)という低価格での提供が可能になっている。
 今後、世界的にGPUコストが下がっていくことで、より低コストでの導入ができるようになることが期待される。

まずはコールセンター領域へのソリューション提供を拡大

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 日本においては、まずは1.1兆円もの市場規模があるとされるコールセンター領域へのソリューション提供を行っていく。
 このコールセンター領域へのソリューション提供に関してはすでに実績もあり、バングラデシュ暫定政府のコールセンターにも導入されている。バングラデシュは識字率が低い国であるがゆえ、電話による問い合わせの需要が高い。コールセンターのAI化によって、人間の介入がなくても高い解決率や待ち時間の削減に寄与できているという。

 また、コールセンター事業以外でも、日本国内においてさまざまな企業とPoC(概念実証)が進められている。
 オートリース企業が取り組んだPoCは、パートナー企業に対する車検確認などの作業を、AIオペレーターが電話発信して会話で確認し、Excelで管理表に落とし込むまでをすべてシステム化するというもの。このPoCはすでにKPIを達成して、実運用へと移行している。
 葬儀業者などでは、葬儀に関する受付をしたのち、安置所や病院への架電と調整を、AIエージェントがすべて音声で行うというPoCに取り組んでいる。夜中の対応も可能で、葬儀業界での人手不足へのアプローチが期待される。

 このように、受電での会話だけでなく、フローチャートにのっとることで、いわゆるアウトバウンドである架電での会話も可能だ。

VoiceUI社会実装の実現に向けて

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 今後は、コールセンターを中心に事業の拡大を図るとともに、他の事業領域でもVoiceUIの活用を進めていく。
 現在、バイリンガル設定を含めたホテルの無人チェックイン機、新人教育などで行われるロールプレイング、オンプレミス環境を使った市役所での窓口対応など、すでにあらゆるシーンでのPoCが進行、予定されている。

 また、人間の声をクローニングする技術により、高齢者の認知症予防のために孫の声のAIと毎日会話する、取引先や業界に合わせた声をクローニングして営業活動に生かす、など、VoiceUIでプラスアルファのアクションを実現する未来も期待される。

 森下氏は、
「世界中には、我々がまだ感知していない活用シーンがあると感じる。VerbexのVoiceUIは、音声AIモデルとアプリケーションが一体となった非常に貴重なモデル。今後もさまざまなシーンで、このモデルを社会実装できるように進めていきたい」
と、VoiceUI活用の展望について語った。

 Verbexは、音声AIモデルとアプリケーションを一体化した独自のVoiceUIを武器に、単なる自動化などではDXが難しい領域や業界にも、アプローチしている。

 社会実装が進むことで、既存のやり方を残しつつ人手不足を補う、という、多くの業界の人間が求めている動きが可能になるのではないだろうか。

「声で世界をつなぐ」というミッションのもと、Verbexが取り組むVoiceUIの社会実装により、音声が人に寄り添う社会インフラとなる未来は、着実に形になり始めている。

BusinessJournal編集部

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