ユニクロ9月売上11%増、伸びたのは「客単価」…ZARA・ニトリと異なる供給網の設計

●この記事のポイント
ユニクロの2026年9月国内既存店売上高は10.8%増だった。ただ客数は0.5%減で、伸びの中心は客単価の11.3%増だった。記録的な長雨と気温低下、前年の残暑による反動が追い風となり、良品計画やしまむらも2ケタ増。ZARA・ニトリとの比較や有明プロジェクト、RFIDを手がかりに、天候の振れに強いSCMの条件を探る。
ファーストリテイリングが10月2日に発表した2026年9月の国内ユニクロ既存店売上高(EC含む)は、前年同月比10.8%増だった。プラスは2カ月ぶり。ニットやカジュアルアウター、バレルパンツといった秋冬物が売上を引っ張った。ただ、中身を分解すると「ユニクロだけが勝った」という話ではない。同じ月、国内の主要アパレルの多くが2ケタ前後の伸びを記録している。まず数字の中身を確かめ、そのうえで、天候による需要の振れを売上に変えるサプライチェーン(SCM)の設計を、ZARA、ニトリと比べながら考えてみたい。
●目次
客数は減少、客単価が伸びた
最初に押さえておきたいのは、伸びの源泉が客数ではなく客単価だという点だ。既存店の客数は0.5%減、客単価は11.3%増。直営店とECの合計では売上高9.9%増となっている。
業界紙の繊研新聞によれば、客単価の上昇は一部商品の値上げとセット購入の増加によるもの。日本経済新聞の報道では、同社は防寒着について「買い上げ点数、1品単価とも前年同月を上回った」と説明している。単価の高い秋冬物へ売れ筋が移ったことが、そのまま客単価を押し上げた格好だ。
天候の影響も大きい。気象庁によると、9月は秋雨前線や台風の影響で、東日本太平洋側の日照時間が統計を取り始めた1946年以降、9月として最も短かった。東京都心では37日連続で雨を観測している。一方で8月から平均気温が大きく下がり、ここ数年続いた「9月になっても夏物が売れる」状況が一変した。
比較対象の弱さも見逃せない。前年の2025年9月は厳しい残暑で、国内ユニクロは1.0%減だった。今年は前年より休日が1日多く、WWDJAPANはこれが売上を1〜2ポイント押し上げたとみている。
他社の数字を並べると、構図はよりはっきりする。
企業 9月既存店売上高(前年同月比)
国内ユニクロ 10.8%増
良品計画 11.6%増
しまむら 10.4%増
ユナイテッドアローズ 10.5%増
アンドエスティ(旧アダストリア) 8.8%増
ワークマン 20.7%増
(出所:各社月次発表、FASHIONSNAP集計)
9月の伸びの大部分は、気温の追い風と前年の反動で説明がつく。ここを過大に評価しないことが、冷静な分析の出発点になる。
「時期を読む」か「振れに付いていく」か
業界全体が追い風を受けたなかでも、各社の説明には違いがにじむ。
ワークマンは台風や長雨でレインウェアが伸び、全体では大幅増だった。ただ同社によれば、秋冬衣料はここ数年の高温傾向を踏まえて投入時期を遅らせたことが裏目に出て、低調だったという。過去数年の「9月は暑い」という経験則に沿った判断が、今年は外れたことになる。
対照的に、ユニクロの担当者は「9月に入り、秋物のテレビCMを流し始めたタイミングで気温が下がったことがプラスに働いた」と振り返っている(FASHIONSNAPの取材による)。
ただし、ユニクロが天候を読み当てているわけではない。今年6月の国内既存店売上高は14.1%減、8月も1.3%減で、いずれも低温や天候不順が理由とされている。天候に振られる点は他社と変わらない。
「天気は当たらない、という前提で組んだ会社と、去年までの傾向に賭けた会社の差が、たまたま今年の9月に出たということです。予測を外さない仕組みより、外れたときの損をどこまで小さくできるか。SCMの実力はそこで測るべきでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)
ZARA、ニトリと比べたユニクロの立ち位置
では、天候の振れに対する耐性は、どんな設計から生まれるのか。製造小売の代表的な3社を比べると、それぞれ別の問題を解こうとしていることがわかる。
・各社の比較項目は、主に解いている問題、生産の置き方、強みが出る場面
ZARA(インディテックス)
トレンドの変化
低価格と品質の両立
天候・季節の振れ
ニトリ
消費地に近い国の工場をシーズン中の追加・修正に活用
ベトナムなどの自社工場、物流子会社まで内製
型数を絞った定番・機能商品を大量生産
ユニクロ
流行の早い立ち上がり
計画どおりの安定供給
定番品の販売量の上下
ZARAを展開するスペインのインディテックスは、スペイン、ポルトガル、モロッコ、トルコといった近接国の生産拠点を組み込み、シーズン中に売れ筋を見て追加生産や修正をかける仕組みで知られる。ただ、スペインの業界メディアModaesによると、2025年度の年次報告では取引工場数に占めるアジアの比率が約62%に上がり、近接地域は約38%に下がった。米国の関税政策などを背景に、速さとコストの配分を見直している様子がうかがえる。
ニトリは「製造物流IT小売業」を掲げ、商品企画から海外の自社工場での生産、物流子会社ホームロジスティクスによる配送までをグループで担う。家具は気温で需要が大きく揺れる商品ではない。計画した量を低コストで安定して流す設計は、扱う商材に合っている。
ユニクロの特徴は、ヒートテックやニットのように型数を絞った商品を大量に作る点にある。品番が少なければ、売れ行きの変化を追う対象も少なくて済む。増産か、配分の変更か、値引きか。判断の単位が小さく、季節の立ち上がりが前後しても、同じ商品の販売量の上下として吸収しやすい。トレンド商品が中心の企業では、こうはいかない。
有明プロジェクトは何を変えたのか
この設計を下支えしているのが、2017年に始まった「有明プロジェクト」だ。同社は同年2月、東京・有明に本部機能を兼ねた物流拠点を開設し、柳井正会長兼社長は自社の目指す姿を「情報製造小売業」と表現してきた。
2018年にはマテハン大手のダイフクと提携し、有明倉庫をEC専用の自動倉庫として本格稼働させた。全商品にRFID(電子タグ)を付け、入荷から検品、保管、出荷までの大部分を自動化している。当時の発表では、入庫生産性は80倍、出庫生産性は19倍、省人化率は90%に達したという。その後、ピッキングの自動化に向けてMUJIN、仏Exotecとも提携した。
RFIDの価値は、作業の効率化だけにとどまらない。単品ごとの在庫が正確に見えていなければ、どの店舗にどれだけ補充するか、いつ、どこまで値引くかといった判断は勘に頼るしかなくなる。ユニクロは毎週のチラシで期間限定価格を打ち出しており、9月下旬から10月初旬にかけてはメリノセーターなどが初めて特別価格になった。値引きは粗利を削る手段でもある。正確な在庫データがあってはじめて、「どこまで下げるか」を数字で決められる。
「RFIDを入れた企業は多いのですが、在庫の数が合うようになった段階で止まってしまうケースが目立ちます。その数字を補充や価格、次の生産の判断にまでつなげられるかどうか。差がつくのはそこからです」(同)
自社に持ち帰れる3つの教訓
アパレル以外の企業にも通じる示唆は、次の3つに整理できる。
1.月次の数字は分解して読む
売上高だけを見ていると、天候、値上げ、休日数、前年の反動といった要因が見えなくなる。客数と客単価を分け、前年の基準と並べるだけで、「実力」と「追い風」の境目はかなり見えてくる。
2.予測精度より、修正の速さに投資する
需要予測の精度を上げる努力は欠かせない。ただ、気候そのものが変わりつつある今、過去の経験則が通用しない年は必ず来る。発注から店頭に並ぶまでのどこを短くできるか、どこで数量を調整できるかを洗い出すほうが、利益への効き目は大きいことが多い。
3.部門ごとの目標を「在庫」でそろえる
営業は欠品を嫌い、財務は在庫を嫌い、生産は計画の変更を嫌う。SCMがうまく回らない企業の多くは、技術より先に、この目標のずれでつまずいている。
「需要予測のシステムを入れる前に、営業、生産、物流が同じ在庫の数字を見て話せる会議体をつくる。地味ですが、そこからしか始まりません」(SCM領域の研究者)
客単価頼みの伸びは続くか
9月の10.8%増は、ユニクロが需要を取りこぼさない体制を持っていることを示した。一方で、伸びの多くが天候と前年の反動によるものであることも事実だ。
注目したいのは今後の客数の動きだ。岡崎健CFOは7月の決算会見で、円安を受けて秋冬商品の一部を値上げせざるを得ないとの考えを示していた。9月は値上げと秋物需要が重なって客単価が大きく伸びたが、客数は前年を下回っている。価格の上昇を客数が受け止め続けられるかどうかが、この冬の焦点になる。
SCMの面でも課題は残る。同社は4月、中東情勢を背景に、東南アジアの生産拠点からの航空輸送が難しくなっていると説明していた。足元の業績は好調で、2026年8月期の連結業績予想は7月に上方修正され、売上収益3兆9700億円、純利益5000億円と、いずれも過去最高を見込む。天候の振れに強い供給網が、地政学リスクや原料高といった別種の振れにもどこまで耐えられるか。10月以降の月次と、近く発表される通期決算で確かめていきたい。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)










