●語学関連サービス
前出のアナリストは、語学関連ビジネスでも期待が高まっているという。
「6年後には、いまより豊かになった新興国からの観光客も増加すると考えられ、英語のみならず、その他の言語での対応も必要になる。ITや小売り、サービス業の分野では多言語化に対応する必要が出てくるため、翻訳事業会社などとの協業も予想されており、ビジネスチャンスが潜んでいる」
翻訳以外でも対個人の英会話ビジネスも拡大を見せているようだ。矢野経済研究所が昨年夏に実施した語学ビジネス市場における調査結果では、12年の語学ビジネス総市場規模は前年度比102.7%の7892億円に上り、レアジョブなどのオンライン英会話レッスンコンテンツ提供会社の拡大も示唆しており、13年度は前年度比118.2%増の65億円への拡大を予想している。ライトユーザーの開拓に、ビジネスチャンスが残っている。
●観光産業
東京五輪招致期間中に話題になったキーワード「おもてなし」も、大きなビジネスチャンスのキーワードだが、特に観光業に注目が集まる。大会期間中に日本を訪れる観光客は、競技観戦だけでなく観光も行う。観光庁は、現在の外国人観光客数1125万人を20年には2000万人にしようと目標を掲げている。観光産業はホテル、土産物、飲食、チケット販売、交通など業界をまたぐハイブリッド産業であり、観光産業という文脈で裾野を広げれば、非常に大きな事業となる。例えば、日本の豊富な自然資源を利用したスポーツツーリズム構想(トレイルランニング、ヒルクライムなど)や、オタク文化メッカである秋葉原の観光推進協会(ATPA)が推進する秋葉原全体のテーマパーク化構想など、すでに多くのプロジェクトが動いている。
●ボランティア
最後に、誰にでも手軽にできる「おもてなし」サービスとして、2つのサービスを紹介したい。「TOKYO FREE GUIDE(TFG)」という団体は、多くの外国人に日本文化や日本で暮らす人々を深く知ってもらうため、観光ボランティアガイド活動を行っている。ゲストに提供する観光ルートに決まりは一切なく、ルートはゲストの希望に合わせて、ガイドがすべてアレンジするのだ。基本的な観光や買い物、食事などに加えて、希望によってはアニメショップや相撲の見学などもある。ゲストだけでなく、日本人であるガイド自身も楽しめるルートを提供することで、お仕着せのツアーでは体験することのできない「リアルな日本」を感じてもらうことができると好評だという。
また、「Couchsurfing(カウチサーフィン)」というサイトもある。これはいわば、旅のSNSだ。旅の行き先に住んでいる人と知り合ったり、一緒に食事したり、街を案内してもらったり、実際におうちに泊めてもらったりすることができる。
この2つのサービスのポイントは、一般市民が外国人観光客に無償でサービスを提供するという点だ。もちろんサービスを提供する側には、語学力のブラッシュアップや国際交流という目的がある。何より一生に1度あるかないかという自国での五輪開催という祭典で、このようなサービスを通じて五輪に積極的にかかわることに意義を感じる人々も多いだろう。
日本のさまざまな領域で、すでに東京五輪に向けたビジネス創出・盛り上がりの胎動が生まれつつある。
(文=降旗愛子/株式会社デファクトコミュニケーションズ)