この増税の背景には、地方を中心とした軽自動車の人気ぶりがある。
じつは、いま自動車業界の国内販売を支えているのは軽自動車で、昨年の販売台数は過去最高を更新する年間200万台を突破し、自動車全体のシェアの約4割を占めた。日本自動車販売協会連合会などが発表した2013年の「車名別新車販売ランキング」でも、1位と2位はトヨタの小型ハイブリッド車に譲ったものの、以下のとおりトップ10に軽自動車が6車種もランクインしているのだ。
・3位:本田技研工業(ホンダ)「N BOX」
・4位:ダイハツ「ムーヴ」
・5位:スズキ「ワゴンR」
・7位:ダイハツ「ミラ」
・9位:ダイハツ「タント」
・10位:スズキ「アルト」
さらに、経営コンサルティング会社・リブ・コンサルティングが自動車を所有している1万1507人を対象に実施したアンケート調査の結果をみても、軽自動車がいかに人気かがよくわかる。
調査によれば、まず年収別に持っている車種を聞いたところ、1000万円以上ではセダンやミニバンが人気で、軽自動車に乗っている人は全体の12%にとどまった。ところが年収がそれ以下になると軽自動車の保有率が上昇。「200万円未満」「200~400万円」「400~600万円」の人の場合、ミニバン、コンパクトカー、ステーションワゴン、セダン、SUVなどの車種を抑えて軽自動車が人気トップで、特に年収200万円未満では46%とダントツなのである。
さらに、年代別調査でも軽自動車は人気で、「20~29歳」から「60~69歳」までの5世代のうち、すべての年代で保有率がトップ。20代にいたっては42%が軽自動車、25%がコンパクトカーに乗っていると回答、じつに約7割が“小さめの”自動車に乗っているという。加えて、軽自動車に乗り換える人は年々増加傾向にあり、購入者の年次ごとの割合をみると、「8年以上前」に買った人が40%なのに対して、「3年以内」は50%、「2年以内」は51%、「1年以内」は55%と徐々に増えている様子がうかがえる。
●増税が軽自動車に冷水を浴びせる懸念も
この軽自動車人気について、自動車業界に詳しいジャーナリストはこう分析する。
「軽自動車は小回りがきいて運転しやすく、いまや性能も小型車とほとんど変わらないレベルになっています。そのうえ、最近の軽自動車はリッター【編註:ガソリン1リットル当たりの走行距離】30キロメートルと燃費もかなりよく、保険や車検、ガソリン代などの維持費も安い。なかでも、軽自動車の一番のメリットは税金の安さです。普通車のもっとも低い自動車税はエンジンの総排気量1リットル以下の小型車で2万9000円ですから、現在の軽自動車税の年7200円はその4分の1以下にすぎません。こうした事情から、公共交通機関が発達していない地方では軽自動車が生活の足として重用されていて、“一家に1台”どころか“ひとり1台”というケースもめずらしくないんです」