プレミアムビールは、普通のビールに比べて価格が2~3割ほど高いが、厳選した材料を使用し、熟成期間を長くするなど、こだわりの味が特徴の高級ビール。昨年のプレミアムビールの販売量は前年比で約7%も伸び、ビール類の市場全体に占める割合も約7%に上るなど、急速に拡大している新ジャンルだ。中でも、人気の火付け役となったサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」は、昨年の販売量が1700万ケースを超え、ビール市場ではアサヒビール「スーパードライ」、キリンビール「一番搾り」に次ぐ第3のブランドにまで成長した。そのため、いまやビール大手がこぞってプレミアムビールの新商品を投入しているのである。
ビール各社が最近投入したプレミアムビールのラインナップは以下の通りだ。
・サントリー…「ザ・プレミアム・モルツ<香るプレミアム>」(2013年5月27日発売)
・キリンビール…「一番搾りプレミアム」(13年6月11日発売、ギフト専用)
・サッポロビール…「薫り華やぐヱビス」(14年1月22日発売、数量限定)
・アサヒビール…「スーパードライ ドライプレミアム」(14年2月18日発売)
だが、景気が回復傾向にあるとはいえ、なぜ普通のビールよりも高いプレミアムビールがそれほど売れるのか。その理由のひとつは、市場で進む「高級」「低価格」の2極化だ。
「いまビール類で売れているのは、スーパーの特売の定番商品となっている第3のビールとプレミアムビールだけ。ビール市場では低価格と高級ビールの2極化が進み、消費者はこの両方を生活の中で飲み分けているのです。実際、サントリーが昨年3月に行った消費動向の調査によると、家庭でプレミアムビールを飲む回数が1年前より『増えた』と答えた人は44.4%に上り、前年の調査より12.8ポイントも増えています。どんなときに飲むか、という質問には、1位が『休日・週末』(21.2%)、2位が『祝い事・イベント・誕生日』(14.2%)、以下『ゆっくり・リラックス・くつろぎたいとき』(13.7%)、『自分へのごほうび』(11.9%)という具合。値段は高いものの、休日などに飲んでちょっとした贅沢を味わうビールとして消費者の心をつかんでいるのです」(マーケティングアナリスト)
●通常のビールの売り上げは大幅に落ち込む
一方で、プレミアムビールはビール業界の「苦肉の策」にすぎないとの見方もある。
実は、もともとビール市場にプレミアムビールというジャンルは存在せず、サントリーが「ザ・プレミアム・モルツ」を発売したのも10年以上前のこと。いわば、プレミアムビールというのは下位メーカーのサントリーが出したニッチな商品だったわけだ。そのニッチな高級ビールが、なぜかたまたま人気ブランドに成長。その成功を見て、アサヒやキリンをはじめとする他社が一斉に追随してきたのが、現在のプレミアムビール市場といわれている。
「ビール業界で唯一の成長ジャンルに参入せず、指をくわえて見ているわけにはいきませんからね。ビール需要は1994年をピークに右肩下がりを続けています。発泡酒や第3のビールを含めたビール類市場は、03年に5億1344万ケースありましたが、13年には4億3357万ケースまで落ち込み、9年連続のマイナスになっているのです」(前出・マーケティングアナリスト)