少額短期保険会社の数は74社。その多くは新興企業だが、丸井グループやイオングループら大手企業も参入、東京海上ホールディングスが少額短期保険会社を設立するなど、大手損保もこの新市場に乗り出した。
制度開始から7年という短期間で急速な成長を遂げている理由は、少額の掛け捨て保険料でユニークな保障(補償)内容がカバーされるからだ。名称のとおり、保険金額は最大1000万円で、契約期間は最長2年と短く、通常の保険商品より規模が小さい。保険料も月々数千円がメインで、なかには1回数百円という商品もある。日本少額短期保険協会によれば、「掛け金も保障(補償)額もミニサイズですから、長時間のコンサルティングも分厚い約款もありません。コンビニのような身近な保険を目指しています」という。
例えば、病気や出張などによってコンサートに行けなくなった場合、チケット代金を補償してくれるのが、チケットガード少額短期保険の「チケットガード」。事前に保険料を支払うと、行けなくなった場合にチケット代金(最大20万円)が返金される。保険料は5000円のチケットで560円、1万円で870円、2万円で1480円と、チケット代金が上がるにつれて割安になる仕組みだ。
この保険を利用したことがある60代の女性は、「友達と歌舞伎やお芝居によく行きますが、この年になると仲間の誰かが行けなくなることがあるので、こういうサービスは心強いです」と話す。
●独自性の高い商品も続々
珍しい商品としては、昨年5月に登場したプリベント少額短期保険の弁護士費用保険「Mikata(みかた)」がある。月々2980円の保険料で、交通事故などのトラブルにかかわる弁護士費用を、1事件当たり300万円まで補償する。
そのほかにも、旅行先で雨が降った場合に旅行代金を還元するお天気保険や、持病のない人向けの歯周病保険、登山で遭難した際の捜索・救助費用が補償される山岳保険など、独自性の高い商品が続々と登場している。
今後の動向に期待が集まる一方、急速な市場の拡大に警鐘を鳴らす声も出ている。ミニ保険を扱う保険会社は、既存の大手生損保と異なり、破たんした場合の公的なセーフティーネット(安全網)がない。また、通常の保険会社に比べて設立の敷居が低く、最低1000万円の資本金で開業できるため、少額短期保険会社の数は増えても、その実態は玉石混淆ともいえる。そのため、少額短期保険加入前には運営会社の事業内容や開示情報などを確認することが重要だ。
成長著しいとはいえ、まだ新しい分野の保険であるため、消費者への認知度は十分ではないが、今後も新規参入の動きが続けば、大手生損保がより短い期間で加入できる保険を販売するなど、保険市場の活性化を促すきっかけともなり得る。消費者は従来の保険との違いを認識した上で、自分に合った商品を選択することが必要だろう。
(文=千葉優子/ライター)