そのオリックス創立メンバーで、1980年に社長就任以来、33年間にわたり経営トップの座に就いてきた宮内義彦会長兼グループCEO(最高経営責任者)が、6月末に取締役を退任することが5月3日、判明した。今後は「シニアチェアマン」という肩書きで、経営的な助言をしたり、人材の育成に取り組むという。宮内氏は会長兼CEOを退くが、オリックス・バファローズの球団オーナーは続投し、財界活動も引き続き行う。宮内氏が兼務してきた会長職は空席となる。オリックスは創業50周年という節目を、新たな経営陣でスタートさせることになる。
●宮内氏退任への布石
実は今回の宮内氏退任に先立ち、オリックスは今年1月1日付で重要な人事を行っていた。井上亮社長兼グループCOO(最高執行責任者)が、社長兼グループ共同CEOに就き、宮内氏と肩を並べるCEOに昇格した。創立50周年を機に、円滑な世代交代を進めるのが狙いだとみられていた。
井上氏は1975年に中央大学法学部を卒業後、創業間もないオリエント・リース(現・オリックス)に入社した生え抜きで、プロジェクト開発、海外事業統括、グローバル事業の各本部長を経て、11年1月から社長兼グループCOOに就いていた。ちなみに共同CEOという現在の肩書きについて井上氏は、過去のインタビューで「COOはCEOが決めたことを実行するだけだが、今は毎日、(宮内氏と)方向性を確認し合っている」と説明している。
オリックスの創立50周年記念パーティーであいさつに立った宮内氏は、「金融を中心とした幅広いサービスを提供する会社として発展していきたい」と抱負を語り、出席者は「宮内氏は生涯現役であり続けるのではないか」との感触を受けたという。そのため、井上CEO体制が確立するのはまだ先とみられていた。
●相次ぐ大型M&A
オリックスは、08年秋のリーマン・ショックで大きな痛手を受けていた。不動産事業に依存した経営が仇になり、一時は経営不安が囁かれる事態にまで陥っていた。しかし、そんなオリックスの復活を象徴するかのような大型買収が昨年発表された。昨年2月、オリックスはオランダ大手銀行、ラボバンクから傘下の資産運用会社ロベコを2400億円で買収すると発表したが、オリックスの手掛けたM&A(合併・買収)案件としては過去最大額だ。ロベコの12年末時点の預かり資産残高は23兆円、世界的な資産運用会社である。欧米で知名度の高いロベコのブランドを使い、アジアや中東で年金運用資産ビジネスを拡充する考えだ。10年に米国の中堅ファンド会社を買収したものの、資産運用分野での存在感が薄かったオリックスは、ロベコの買収で一躍、日本で首位の野村アセットマネジメントに匹敵する規模になる。
オリックスはさらにM&A攻勢を加速させた。子会社のオリックス生命保険を通じて、米保険大手ハートフォードの日本法人ハートフォード生命保険を買収する。7月に発行済み株式のすべてを916億円で取得する。ハートフォード生命は2000年に日本市場に参入し、大手銀行や地銀などを通じ貯蓄性の高い変額個人年金保険などを販売してきたが、リーマン・ショック後の金融市場の混乱による運用実績の低迷や元本保証コストの上昇もあり、09年6月以降、新規契約の取り扱いを停止していた。ハートフォード生命の13年末時点の保有契約数は37万5000件で、契約高は2兆3000億円。リーマン・ショック前までは変額年金のシェアで国内首位だったこともあって、変額年金の規模は決して小さくない。オリックスは今後1~2年以内にオリックス生命とハートフォード生命を合併させる方針だ。