オリックス生命は現在、割安な医療保険などを中心に200万件の個人契約を保有している。高齢化社会が進む中で成長の余地のある分野だが、それだけに大手や外資、損保系生命保険会社が入り乱れて激戦区になっている。今後は高い収益性が見込める終身保険など第一分野(死亡保障商品)を伸ばしたい考えだ。富裕層が多いハートフォード生命の顧客基盤を生かして業容の拡大につなげる。
オリックス生命のトップは3代続いて大蔵・財務官僚の天下りポストだったが、今年1月に生保業界を渡り歩いてきた片岡一則氏を社長に招いた。千代田生命保険(現・ジブラルタ生命保険)、アリコジャパンなどを経て、12年には三井生命保険取締役専務執行役員を務めた、まさに「生保のプロ中のプロ」と業界では言われている人物で、片岡氏がハートフォード生命との合併作業を担当することになる。
●新規事業参入にも積極的
オリックスが前述のとおりリーマン・ショックにより業績が傾きかけた際、宮内氏の対応は素早かった。不動産を中心に資産圧縮を進める一方、保険をはじめとするリテール分野や、海外事業に経営の舵を大きく切り、最近では太陽光発電ビジネスにも注力し、積極的に大型M&Aを仕掛けるほどにまで復活した。井上氏は太陽光など再生可能エネルギー事業の拡大を通して、東京五輪が開催される20年までに新電力業界の上位を目指す方針を掲げている。
米ブルームバーグ・ニュースのインタビューで井上氏は、今後1年で国内外でのM&Aに1500億円程度の資金を投じていく方針を明らかにしている。具体的には、シェールオイルブームに沸く米国にビジネスチャンスがあるといい、「太陽光やウインドファーム(風力発電)事業」など金融以外への投資を検討するという。
カリスマ的経営者と呼び名の高い宮内氏が去り、オリックスが現在の勢いを維持していくことができるのか、早くも業界内の注目が集まっている。
【続報】
宮内氏は5月8日の記者会見で、6月に退任すると正式に発表した。「(設立から)50年で大企業のひとつになった。元気なうちに(トップの座を)引き継ぐのが会社のために良いと決意した」と語った。体力が続く限りトップを務める意向だったが、「ぎりぎりまでトップに居続けるのは無責任、という考え方に変わった」とも述べた。「バブル崩壊、アジア通貨危機、リーマン・ショックと、何度も危機に見舞われたが、一度も赤字を出さなかった」と胸を張った。そして、小泉内閣時代には総合規制改革会議の議長などとして、構造改革路線の旗振り役となった宮内氏は、「安倍政権が、岩盤規制に『第3の矢』で切り込むことを期待している」と結んだ。会見には、6月からCEOとして経営の舵取りを担う井上氏も同席し、「宮内イズム、オリックスのDNAを深め、次の50年への第一歩を踏み出す」と抱負を語った。
(文=編集部)