アマゾンといえば、通販大手というのが一般的な印象だろう。たとえ漫画1冊でも注文すればすぐに宅配便で届けてくれ、品揃えも幅広く、非常に便利だ。食品から工具まであらゆるジャンルの商品が購入でき、むしろ取り扱いされていないものを見つけると、「アマゾンで売ってないものもあるのか」と驚きを感じてしまうほどだ。
リアル店舗や他のECサイトからも目の敵にされていて、「打倒アマゾン」の機運が盛り上がっている感さえもある。
ところが、実は近年のアマゾンは、小売り事業だけの会社ではなくなってきている。グーグルやマイクロソフトと並ぶクラウドサービス大手になっているのだ。
●費用は使った分だけ
アマゾンの提供するクラウドサービス「Amazon Web Services」、略して「AWS」は、単純にクラウド上にストレージを確保したりメールサービスを提供するものではなく、サーバや回線などのインフラそのものを提供する「IaaS」と呼ばれるタイプのサービスとなっている。
世界中の多くの人が利用する巨大通販システムを運用する中で培われた技術と設備を公開するかたちで2002年にスタートしたサービスで、すでに多くの企業が導入している。サービス利用量に応じた料金を支払うところに特徴がある。つまり、事前に使用量を想定して料金コースを決める必要がない。
何かちょっとした出来事によって一気に利用者が増えるサービスがある。例えば、大手ニュースサイトである企業の商品が紹介され、その企業のサイトにアクセスが殺到するようなことも珍しくない。また、ビジネスの内容によっては、日ごと、月ごと、季節ごとに利用量がかなり違うということもあるだろう。
従来型のサービスでは、一番多い時に合わせてリソースを備え、利用量が少ない時は無駄なコストとなるような使い方しかできなかったが、クラウドサービスで従量課金のように使った分に合わせた料金であれば、無駄を減らせる。AWSはそうした使い方ができる代表的なサービスだ。
●世界的にも日本企業にも導入事例多数
AWSのサイトでは、各種導入事例が公開されているが、AdobeやCitrix、Nokiaなど世界的に有名なIT系大手企業をはじめ、アメリカ航空宇宙局(NASA)の名前も入っている。
日本企業にも導入例は多い。回転寿司のあきんどスシロー、住宅メーカーのミサワホーム、ゲームメーカーの任天堂など、おなじみの名前が並んでいる。多彩な機能が用意されているAWSの中で、どのツールを利用しているかは各企業によって異なるが、多くの企業が社内の重要なシステムをアマゾンのクラウドサービス上で動かしているのだ。