「シャアは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のラストで行方不明となるのですが、『機動戦士ガンダムUC』ではシャアと同じ容姿をしたフル・フロンタルという人物が登場し、シャア本人なのかどうかという議論を巻き起こして大きな話題を呼びました。また、古参ファン垂涎のモビルスーツや人物が多数登場するのも特徴。主役機のユニコーンガンダムは、アムロの乗機であるv(ニュー)ガンダムに採用されていたサイコフレームを全身に使用しているという設定ですし、フル・フロンタルはかつてのシャアの乗機を彷彿させる真っ赤なシナンジュに搭乗しています。ほかにも、かつてシャアが乗っていた百式の発展形であるデルタプラスも登場するなど、盛りだくさんです。登場人物も贅沢で、ブライト・ノアやカイ・シデンといったファーストガンダムの人気キャラも登場しているので、昔ながらのファンにはたまらない作品に仕上がっています。そして同作は劇場公開、インターネット有料配信、ブルーレイ販売といった複数の公開形態を短期間で同時進行させるという変わったかたちで展開し、ビジネス的ヒットにつながっています。全7話を各1時間程度にまとめて発表していくという形態なのですが、5話目に当たる『機動戦士ガンダムUC 5』は、12年のオリコン年間ブルーレイディスクランキングで、年間12.4万枚を売り上げて総合1位を獲得するほどでした。これから発売される最終巻『機動戦士ガンダムUC 7』も、それ以上の売り上げが期待できます」(同)
『機動戦士ガンダムUC』人気は、他のSF作品にも多大な影響を与えたという。
「1本1時間程度のシリーズ作品を複数の公開形態で同時進行的に発表していくというのは、この『機動戦士ガンダムUC』が初めて取り入れた方式だったのですが、漫画『攻殻機動隊』の新シリーズ劇場用アニメ『攻殻機動隊ARISE -GHOST IN THE SHELL-』(ワーナー・ブラザース)や、『機動警察パトレイバー』の実写版シリーズ『THE NEXT GENERATION パトレイバー』(松竹)でも、似たような形態を採用しています。『機動戦士ガンダムUC』のビジネス的な大ヒットを受けて、『攻殻機動隊』や『パトレイバー』といった人気作も追随したのは明らかです。したがって、アニメや付随するコンテンツの売り出し方において、新しい手法を確立したという点でも『機動戦士ガンダムUC』は高い評価を得ています」(同)
35年前の立ち上げ当初は順風満帆ではなかったガンダム。ときに批判を受けながらも、その時代その時代に即した攻めの戦略を取ってきたことで、年間802億円も動かすモンスターコンテンツにまで成長してきたということなのだろう。
(文=編集部)