ちなみに開発担当の山田忠孝取締役(米国籍)の報酬は8億3500万円、株主総会後に会長兼最高経営責任者(CEO)に就いた長谷川閑史氏は3億500万円だった。
役員報酬ではグローバル化をひた走る武田だが、経営は大きく揺らいでいる。
1781年の創業以来、初めての外国人社長を選任する武田の株主総会は6月27日、大阪市で開かれ、英製薬大手グラクソ・ミスクライン出身のフランス人、クリストフ・ウェバー最高執行責任者(COO)らを取締役に選任する議案が審議された。創業家の一部やOB株主112人が「外資による乗っ取りだ」と反発し、異例の7項目の質問状を提出。「創業家の反乱」と大騒ぎになった総会は、過去最高の3時間4分に及んだ。
総会の議長を務めた長谷川氏は、質疑に入る前に30分以上の時間をかけて質問状に回答した。ウェバー氏の社長就任については、「当社が事業のあらゆる面においてグローバルに競争力のある会社になるためには、国籍や人種にかかわらずグローバルに通用する人材をキーポジションにつける必要がある。クリストフ・ウェバー氏の選定は、日本人を含む複数の候補者の中から、グローバル企業であるタケダをリードする人材として最も相応しいとの判断で行った」と説明。「ウェバー氏の社長就任と、外資による買収リスクが高まるということを、どう関連づけて質問しているのかわからない」と一蹴した。
創業家やOBは、長谷川氏が進めたミレニアム(アメリカ)とナイコメッド(スイス)の計2兆円を超す海外企業の大型買収についても「失敗は明らかだ」と批判した。これに対しても長谷川氏は「成長確保・成長回復のための施策であり、現にその目的を果たしている。買収は成功だった」と真っ向から反論した。さらに、武田の利益が減少している主たる原因は、「買収の結果ではなく、業績を牽引していた4つの医薬品の特許切れや自社品比率低下による収益性の低下という『構造的変化』」と述べた。
そして総会では、外国人の取締役就任を含む7議案のすべてが承認された。総会内では、「大型新薬もそろいつつある」「買収で有望な新薬を発売でき、成長性が高い新興国の販売が広がった」という会社側の説明に対し、株主から「虚勢を張っているとしか見えない」との辛辣な意見も上がった。創業家の一人からの「新経営陣で業績向上が達成できなければ全員退陣するのか」との問い掛けに、それまで多弁だった長谷川氏は一転、「がんばります」と答えただけだった。総会後の臨時取締役会でウェバー氏の社長就任が正式に決まったが、株主からの信頼を得るまでは時間がかかりそうだ。
(文=編集部)