アサヒグループホールディングス(HD)の株価は上場来高値を更新し続けている。7月2日に3226円を記録、4日には3240円の史上最高値をつけた。アサヒHDは発行済み株式総数の4.32%に当たる2000万株、500億円を上限に自社株を取得する。取得期間は7月9日から10月31日までで、併せてユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債:CB)478億円についても8月に買い入れ消却する。1株当たり利益の希薄化を抑えるのが狙いで、資本効率の改善を好感して買いが膨らんだ。その結果、7月4日現在で時価総額は1兆5629億円となった。一方、ライバルであるキリンホールディングス(HD)は同1兆4195億円だ。
今年1月31日、時価総額でアサヒHDは初めてキリンHDを上回り話題になった。この時、その差はわずか36億円だったが、今やその差は1434億円に広がった。夏の書き入れ時を迎えたビール業界は、アサヒHDの勢いばかりが目立つ。
●サッポロHD、追加納税という誤算
サッポロビールは低価格の第3のビールとして販売していた「極ZERO(ゴクゼロ)」をめぐり、本来ならもっと高い酒税率を適用される可能性があると国税当局から指摘され、116億円を追加納税するなどしてつまずいた。これに伴い親会社のサッポロホールディングス(HD)は、14年12月期第2四半期(14年4~6月)決算で追加納付分を特別損失として計上する。サッポロHDが追加納税する116億円は、「極ZERO」が第3のビールではなくビールと同じ税率だった場合に払うべきとされる金額で、350mlの1缶当たりの税率は第3のビールが28円、発泡酒は同47円、ビールは同77円である。
サッポロHDは自主的に修正申告を行うことにしたが、経営には大きな痛手だ。同社の14年12月期の連結当期利益予想は50億円で、追加納付額は当期利益の2.3倍になる。通期の最終損益で赤字に転落すれば、03年12期に持ち株会社に移行して以来、初めてのことになる。14年12月期も年7円配当を継続する方針だが、赤字転落は避けられないとの見方が多い。
「極ZERO」は発泡酒に転換して7月15日から再発売する。サッポロHDは「事前の注文が全国から52万ケース(1ケースは大瓶20本換算)に達した」と発表。「計画を4%上回る好調ぶり」としているが、店頭価格が20円上昇することで販売が失速する懸念は残る。サッポロHDにとっては久々のヒット商品だっただけに、経営的な打撃は小さくない。
ビール各社は安い税額でビールに迫る味わいを引き出すため、複雑な製法を工夫している。第3のビールか発泡酒かの線引きは麦芽の使用率だけでは決まらない。ビール類の課税強化を考えていた国税が目をつけたのが「極ZERO」だったといわれている。証券市場では「サッポロは狙い撃ちされた」と囁かれている。
特別損失を計上することを嫌気され、サッポロHDの株価は下落。6月4日に年初来高値の456円をつけていたが、6月30日には403円まで下げた。2月5日の年初来の安値、353円に接近するかもしれない。