インターネットを活用したマーケティング業務支援を手がけ、数多くの上場企業を顧客に持つネットイヤーグループ創業メンバーであり、現在同社CEOの石黒不二代氏。シリコンバレーでの起業経験も持ち、アメリカのIT業界に詳しい石黒氏が、今さらながら、シリコンバレーを知りたい人に、現地の会社や投資の全容をお伝えします。
「シリコンバレーやアメリカのIT業界で起きていることをウォッチしておく必要がある。なぜなら、日本のIT企業がビジネスモデルなりテクノロジーなり、アメリカのそれを追っていることが多いから」
そう思う人は少なくないでしょう。しかし、そんなことを考え、日々、アメリカのニュースを検索している人の中にも、今さらながら、シリコンバレーの全体像を知りたいと思っている人はいるのではないでしょうか?
「どんな会社があるんだ?」とか、「そのランキングは?」とか、「どんな投資が行われているだろう」とか、はたまた、「全体の傾向は?」とかです。
今回は、とてもいい投資のニュースを目にしたので、ついでといってはなんですが、「まとめ」をしてみました。英語のニュースばかりですが、グラフや表が多いので、これを機に傾向をつかんでください。
Latest quarterly numbers indicate continuing gloom among most venture capital firms – SILICONVALLEY.COM(8月10日)
今回は、シリコンバレーのまとめなので、いかんせん、地元の新聞が中心になります。もう紙の新聞をどれだけの人が読んでいるのかわかりませんが、もちろん、地元の新聞社San Jose Mercury Newsは早いうちからオンラインに転向し、良質の記事を常に提供しています。それが、このSiliconvalley.comです。記事は、今年第2四半期のベンチャーキャピタルの投資状況をまとめたものです。全体のトーンとしては、
・投資が控えめであること
・アーリーステージへの投資が復活してきていること
・業務系が人気があること
などですが、全体のマップや表を見ると、とても面白いことがわかります。
地元ではBay Areaと呼んでいるSilicon Valleyへの投資額が、アメリカ全体の投資の46%を占めています。これは、私にとっても驚きでした。1990年代は、アメリカの投資の約3分の1がここシリコンバレーにされると言われていましたから、要するに、さらに、シリコンバレーに集約されてきたということですね。
それと、シリコンバレーへの投資とアメリカ全体の投資を比べたグラフを見ると、アメリカ全体ではテレコム(通信)やバイオが多いのに、シリコンバレーではソフトウェアがずば抜けて多い。シリコンバレーでも長期にわたる投資傾向というのがあり、「ソフトウェアやインターネットからバイオやクリーンテクに変遷する」といわれた時期もあったのですが、「いまだにソフトウェア強し」というのは、昨今のIT環境の拡大傾向を知っている我々には納得感がありますね。
最後にある、ダウンロードができる「Venture Capital Funding, Second Quarter
2012」は、4月1日から6月30日までにベンチャーキャピタルから投資を受けた会社と投資額や業務内容がまとめられています。なんて親切な新聞なんでしょう(笑)。
ところで、この表の上にある「Q2 1011: $7.5 billion, 966 deals」は「Q2 2011」の誤植です。2011年の第2四半期にアメリカで実施されたベンチャー投資額とディールの数ですが、1011年は日本は平安時代で、アメリカはまだ発見されていませんから……。
Money Tree Report – PricewaterhouseCoopers
ところで、上のSiliconvalley.comの投資記事の元ネタになっているのが、これです。アメリカのベンチャー投資状況をかなり前からずっと「まとめ」ているのが、監査法人のPricewaterhouseCoopersのNational Venture Capital Association という部門です。ウェブベースで公開されている内容だけでも、とても価値が高いものです。
Pausing for breath – PricewaterhouseCoopers(4月)
こんな分厚いレポートを提供してくれるなんて、気前がいいとしか思えません。
Historical Trend Data(Money Tree Report) – PricewaterhouseCoopers
アメリカのベンチャーキャピタル投資は、歴史的に見ると、1999年から2000年まですごい盛り上がりを見せていたんですね。額とディール数のグラフもクリックひとつで変わります。日本のメディアも、ここまでサービス精神があるといいのですが(笑)。
Silicon Valley 150 Data Result – SILICONVALLEY.COM(4月20日)
こちらは、シリコンバレーに本社がある会社の売上高別の順位表
150社まであります。11年からAppleがトップですが、「各会社は売上高が高くても利益が低いな」とか、「時価総額はやはり成長性を反映しているんだな」とわかります。
例えば:
・AppleとHPは同じくらいの売り上げ。でも利益はAppleが4倍以上。
・Googleはまだ6位。利益もIntelにはかなわない。でも、時価総額は高く、他のハードウェアメーカーをほぼ抜いてしまっている。
・Oracleは売り上げも利益もGoogleとほぼ同じ。
いずれも、へえ、という感じですね。ちなみに、4月時点のデータなので、Facebookは入っていません。
O’Brien: Welcome to the new and expanded Silicon Valley – SILICONVALLEY.COM(4月21日)
これは、この150社を業種別に分けてパフォーマンスを要約したもの。法人向けは案外多いものですね。
Silicon Valley 150 – SILICONVALLEY.COM
そして、会社やセクターを入れると情報が出てくる。こういうインターフェースを日本のメディアも採用してほしいものです。
SV.com 20 companies – SILICONVALLEY.COM
これは、記者目線で、シリコンバレーで最も影響力の強い会社20社をまとめたものです。知らない会社があったら反省しましょう。
The Top 10 VC Firms, According To InvestorRank – TechCrunch(2011年5月25日)
古い記事で恐縮ですが、TechCrunchが選んだベンチャーキャピタル側のトップ10です。新興なのに、Andreessen Horowitzがトップですね。面白いのは、下のほうにあるトップ15社の投資傾向です。業態別や分野別ではなく、トップ10のVCと一緒に投資したもの、トップ25と、トップ50と、という割合です。
つまり、鶏と卵ではないですが、いいスタートアップだから、トップノッチのVCがみんな投資したのか、もしくは、あそこが入れるからうちも入れようなのか、結局、上位VCがみんなで応援するからパフォーマンスがよくなるのか、定かではありません。
Silicon Valley Map & Calendar posters – Silicon Valley Map
最後におまけです。地図を買いたい人はこちらでどうぞ。