同社がLINEを開始したのは11年6月。当初は無料メールアプリに特化したサービスだったが同年10月、感情表現をした絵文字アプリ「スタンプ」をサービスに追加したのをきっかけに人気がブレイクした。
同年11月に登録ユーザ数が1000万人を突破すると、12年4月に3000万人、同年7月に5000万人、同年11月に8000万人と急伸。さらに13年1月に1億人を突破したかと思うと、同年7月には2億人を突破。その後も4カ月ごとに1億人ずつ増加、今年7月末は4.9億人まで増加、「8月中の5億人突破は確実」(市場調査関係者)と、破竹の勢いで登録ユーザ数が増加し続けている。
日本国内ではスマートフォン(スマホ)ユーザのほぼ全員に相当する5200万人を手中に収め、今や敵なしの同社だが、LINE登録ユーザの90%を占める海外では苦戦している。海外では億単位の登録ユーザ数を抱える無料アプリサービスがいくつも存在し、強豪が市場に根を張っているからだ。
例えば、米国では「ワッツアップ」、中国では「微信(WeChat)」、韓国では「カカオトーク」、欧州や中東ではキプロスの「Viber(バイバー)」が普及しているが、海外に進出したLINEはこれら強豪に行く手を阻まれ、国内のような破竹の進撃ができないでいる。
今年4月、都内で開かれたIT企業を中心とする経済団体・新経済連盟の新経済サミットでLINEの森川亮社長は「今までアジア発で世界一になったインターネットサービスはない。LINEは15年にユーザ10億人を目指し、それを実現する」と胸を張った。もちろん東証上場を意識しての発言だった。こうした森川氏の発言もあり、LINE上場に対しては株式市場関係者の間で「成長戦略推進のための資金調達」と好意的に受け取られている。
だが、関係者に取材を進めてゆくと、LINEの上場をめぐる複雑な事情がみえてくる。
●海外市場で伸び悩むシェア
LINEは、一言でいうと無料アプリで取り込んだ登録ユーザを有料アプリや有料コンテンツに誘い込んで収益を上げるビジネスだ。このため、安定的に収益を上げるには、無料アプリ登録ユーザのシェアをトップレベルに保つ必要がある。国内市場ではこれをクリアしているが、問題は海外市場だ。
市場調査会社の米グローバルウェブインデックスが7月21日に発表した「世界のスマホ向け無料通話アプリ」調査によると、LINEの世界シェアは10%で5位。1位は米フェイスブック傘下のワッツアップ(38%)、2位は「フェイスブックメッセンジャー」(37%)、3位は米マイクロソフトの「スカイプ」(32%)などで、ベスト3とは相当な開きがある。LINEの国別シェアは「台湾(シェア56%)以外では、どの国でも10%前後」(市場調査関係者)だという。