テレビ市場に異変! 王者ソニーの強敵として東芝が急浮上?
4ー6月期はパナソニックが黒字転換、ソニーも収益性を改善したが、シャープは大赤字に沈んだまま。明暗を分けたのが、テレビ事業の構造改革の差だ。ただ、復調傾向にある2社も「脱テレビ」を打ち出しつつ、自社内でテレビの位置付けが曖昧なまま。かつてのお家芸だったニッポン・テレビ産業の行方は、依然不透明のままだ。
販売台数ペースで東芝がトップに
8月初旬、ソニーは13年3月期の世界のテレビ販売台数の見通しを、従来の1750万台から1550万台に引き下げた。パナソニックは従来予想の1550万台を据え置いたものの、前期に比べれば202万台低い水準だ。
これにより、数年前では信じられない事態が現在起きている。ソニーを抜き年間1600万台の販売を掲げる東芝が、台数ベースとはいえ、国内メーカー首位に立つ公算が大きいからだ。利益段階でも12年3月期こそ国内のエコポイント終了後の伸び悩みがあり、500億円の赤字と落ち込んだが、それ以前は、08年秋のリーマンショック以降、大手電機メーカーが軒並み赤字を計上する中、唯一黒字を確保していた。
電機業界担当のアナリストは「徹底したコスト削減こそが東芝の強さ」と語る。自社での設計生産を早期に見切り、ODM(生産委託先企業のブランドで、設計から製造までを手がける)企業の活用に転換。今や東芝の2台に1台近くは、他社が設計生産して東芝のロゴだけを付けた製品だ。また、競合他社の技術者は「自社生産品も、部品をODMに調達を依頼する動きがあると聞く。ODMの規模のメリットを生かしたほうが安いと判断したのだろう。自前へのこだわりのなさこそが東芝の強み」と指摘する。
現在の惨状を招いた、高画質の追求
これまでパネルの生産から自社で手がけてきたパナソニックも、こうした外部企業の活用などを進める。だが、「東芝のような思い切ったことができるのか?」との見方が支配的だ。「いかに高画質なディスプレイをつくるかとの発想で事業を進めてきた各社が、その発想を簡単に捨てられるのか?」と疑問視する向きは少なくない。
薄型テレビは、すでに一部のメーカーだけがつくれる製品ではないのは周知の通りだ。原価の7割近くを占めるパネルの付加価値をいかに高めるかが勝負の時代も、かつてはあった。そして、急速なコモディティ化で競争の軸が変わった。シャープの躍進と凋落、米国市場で工場を持たないファブレス企業のビジオが一時期シェアトップを握ったことからも、それは明白だ。
ビジネスモデルの変化にあるのは、コモディティ化に加え、スマホやタブレットの登場に伴う、家電間の垣根の消失がある。ハードウェアとしてのテレビの価値の低下は防ぎようがない。
こうした流れを加速させそうなのが、インターネットに接続できる「スマートテレビ」の潮流だ。通常放送に加え、ネットに接続して動画や音楽、映画配信を楽しむことができる。
インターネット+テレビの潮流