サムスンを訴えるアップルもマイクロソフトも、最初はパクり屋?
ネットサービスの業界では、ロケットインターネットというドイツ企業があり、eBayやGroupon、Zapposなどの米国ベンチャーのサービスモデルを徹底的にコピーして、彼らが参入しそうな国で先んじてビジネスを始めてしまう。そして、本家が参入してきたら彼らに事業を売るというビジネスモデルで大成功している。いわば、コピーキャットビジネスの最先端だ。
ロケットインターネットのやり方は、“コピー”なんていう生易しいものではなく、ほぼ完璧なクローンをつくってしまう。アイデアをパクるどころか、サイトのデザインから仕組みまで完全に再現する。ソースを違法にコピーするわけではなく、あくまで徹底的に観察して、同じものをイチからつくってしまうのである。
こうした手法はリバースエンジニアリング(製品を手に入れたら、それをバラして中身を調べて、似たようなものをつくること)といって、日本企業も昔は得意にしていた。まったく新しいものをつくるのは難しいが、見たものをつくるのは意外に簡単だ。これは、100mを10秒未満で駆け抜けるアスリートが登場するやいなや、世界中でもっと速く走ることができるランナーが続出する現象によく似ている。
すごいコピーは、訴えるより買収
パクられた本家のほうも、ロケットインターネットのクローンサービスがあまりに出来がいいコピーなので、訴えるよりも買ってしまえという判断をすることが多く、結果として新興市場への参入コストより買収金額が安ければ、それはそれでお得、ということになるわけだ。
実際、eBayはロケットインターネットがつくったクローンサービス「Alando.de」を5000万ドル以上で買収したし、Grouponは同じく「MyCityDeal」というクローンを1億ドル以上で買い上げている。最近では、Pinterestのコピーとして「Pinspire」というサービスもリリースしている。
フェイクというクールさ
ロケットインターネットの場合は、先ほどの公式「パクリ+」は当てはまらないのかもしれない。ただ、彼らの場合はパクり方があまりにも見事だし、本家との訴訟合戦に陥る前に、売り抜けることを前提にした短期戦略なので、サムスンのような本格的な訴訟を受けることは少ないらしい(あることはある)。それが彼らの工夫といえばそうともいえよう。彼らほど徹底すれば、また、(Appleを本気で怒らせるほどの出来映えのパクリをしてみせた?)サムスンほどに振り切れば、それはそれでトリックスターとしてのかっこよさも見えてくる。フェイクはフェイクで、それなりにクールだからだ。