8月21日に開かれた産業構造審議会(経産相の諮問機関)分科会で同省が示した「自動車産業戦略2014」には、EVやPHVの補助金について「15年度以降も引き続き実施することを目指す」と書かれていた。業界関係者が解説する。
「経産省は、15年度いっぱいでEVやPHVの補助金を打ち切り、FCVに一本化する方針をメーカーに伝えていた。同クラスのガソリン車との価格差がほぼ解消する見通しがついたためだが、販売が低迷する現状を見て方針転換を余儀なくされた」
EV普及の遅れを象徴するのが、車種ラインアップの少なさだ。例えばEVは相変わらず日産自動車「リーフ」と三菱自動車「アイミーブ」が二大看板だが、リーフは登場から4年、アイミーブは5年もたつモデルだ。
EVに熱心な日産は11年10月、4車種のEVを16年度までに発売するとアナウンスした。16年度まではまだ時間はあるが、「リーフ」に次ぐ2車種目は商用車。しかもスペインで組み立てて日本へ運ぶため、今年6月に発表したものの、販売開始は10月という。また、三菱自動車は日産と開発する軽自動車の次期モデルをEVにする考えを示したが、生産拠点をめぐって日産との不協和音も報じられており、発売時期はまだ見えない。この間、BMWは「i3」を発売、フォルクスワーゲンも「up!」と「ゴルフ」のEV版を年末にも日本で発表する予定。
これらの輸入車も日本政府の補助金をもらえるし、充電インフラを使うこともできる。しかし「電動系エコカー分野で日系メーカーに世界をリードさせようと補助金やインフラ整備に力を入れてきた経産省にとっては、面白くないだろう。いきおい、不満の矛先は日系メーカーに向かうことになる」(業界関係者)。
●エコカー政策が袋小路に入り込む懸念も
もちろん、「我々は販売までコントロールすることはできない。買うかどうかはお客さんが決めることだ」(大手メーカー関係者)との言い訳も漏れてくるが、経産省は「一定期間のうちに普及レベルまで持っていくのがセオリー。売れないからといってダラダラしていたらダメだ」(同省官僚)と苛立ちを隠さない。