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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第15回

不振イオン、打開策・規模拡大戦略の成算は?スーパー業界、「価格重視」からの転換点か

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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 このような戦略からは、イオンとして規模を追求しバイイングパワー(商品調達力)を高めて仕入れ価格を低くしたり、ブランドの統一によるオペレーションコストの削減に努めたり、コストリーダーシップで競争を優位に展開し、低価格を武器に窮地を脱しようという狙いがはっきりと見えてきたのです。

●値下げで消費者を呼び戻せるか

 確かに低価格は消費者に対して強力なアピールになります。ナショナルブランドの商品であれば、顧客は基本的にどこのお店で購入しても同じものを手にすることができます。だとすると、合理的な消費者であれば、1円でも安いところで購入することはなんら不思議ではありません。ですから、小売業者にとって規模を拡大して事業の効率化を推進し、薄利多売で競争を勝ち抜こうという戦略は、あながち間違った考えではないかもしれません。ただ、総合スーパー業界で安売りを武器に破竹の勢いで成長を遂げてきたダイエーの戦略が破綻したことを考えれば、イオンが同じ道を進んでも大丈夫なのかという不安が頭をもたげてきます。

 実際に最近業績が堅調な総合スーパーを分析すると、その要因が価格ではないことが浮き彫りになります。例えば、同じイオン傘下のマルエツは上期の業績が既存店売上高で前年同期比4.9%増、営業利益に至っては230%増と消費増税をものともせずに快進撃を続けています。

 この快進撃の要因となったのが、「上質商品」「大量品目」「素材回帰」の3点だとマルエツの上田真専社長は分析しています。マルエツでは、高品質のものを中心に、ある程度のボリュームを重視して販売する戦略に切り替えてきました。これは、最近多くなった独り暮らしの家庭用に小分けパックなどで安く販売するスーパーの戦略の真逆といっても過言ではありません。また、素材にもこだわり、あえて高価格での販売に力を入れ、単価の向上を目指したのです。

 ただ、このマルエツの逆張りの戦略は、例えば中国での消費期限切れ原材料の使用が発覚して食に対する不安が高まった消費者の安心安全を求める心理をうまく捉え、イオンをはじめとした多くの総合スーパーが苦戦する中で、快進撃につながったのです。よって、「価格にこだわるスーパーの不振」と「価値にこだわるスーパーの好調」を踏まえれば、最近の消費者は価格よりも価値を重視する傾向に潮目が変わってきたといっても、あながち間違いではないでしょう。

●イオンは「変化」できるか?

 顧客に商品やサービスを購入してもらう原理は、「顧客の望むもの」を「望む価格」「望むタイミング」で提供すればいいという非常にシンプルなものです。ただ、難しいのは、この3つの要素が環境に応じて常に変化しているという点です。さっきまで「あれが欲しい」と言っていた顧客が、舌の根が乾かないうちに別の商品に気を引かれたというのは日常茶飯事です。それほど顧客の心は変化しやすいのです。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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