「『トレンディ』の場合、日経MJ『ヒット商品番付』に比べると、富裕層を意識しすぎている印象を受けます。『トレンディ』が初めてランキングを発表した1987年、他のランキングでは1位がビール『アサヒスーパードライ』や洗剤『アタック』だったのに対し、同誌の1位はなんと『自動製パン機』で『アサヒスーパードライ』は13位という結果で、当時から違和感を覚えていました。さらに次年の予測となると、突然『グランピング・ゴルフ』が出てくるなど、率直にいって恣意的なものを感じます」(同コンサルタント)
ちなみに審査基準・方法や審査体制について「トレンディ」に取材を申し込んだが、「回答は控えたい。誌面に書かれていることがすべてです」(日経BP社広報)とのことであった。
●問われる公正さと透明性
メディアの動向に詳しい博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓氏は、商品ランキング作成・発表などにおける透明性の重要さについて、次のように語る。
「ネットに書き込むユーザーは自分たちが感想を書いたり、取り上げて論評することを好むため、『誰がランキングを作成した』のか開示を求める傾向が強いと思います。透明性を重視するというわけですが、そうした“ネット世論”も無視できない要因として大きくなってきているのではないでしょうか。例えば、飲食店のランキングで有名な『食べログ』でもランキング操作を標榜する業者の存在が問題になりましたが、食べログ側は、ランキングの適正維持のためにかなりの労力を割いており、目立つレビュアーには実際に会って人物像を確認することまで行っています。11年に問題が発覚してから、そのチェック体制はさらに強化されているのですが、ランキングを作成する場合、どれほど公正性が大切かがよくわかります」
ちなみに森永氏によれば、今後、同類のランキングは数が増えていくと予測する。
「方向性は2つあるでしょう。1つはビッグデータ解析など、人為的な評価をなるべく少なくしようとするタイプ。もう1つは逆に選考委員の主観を思いっきり前面に押しだすタイプですね。その結果、これまで一定の社会的評価を受けてきたランキングやコンテスト、賞などでも、選考委員が明らかになっていないものは、生活者からの受け取られ方や重要度が変化していく可能性があると思います」
いずれにせよ企業や消費者の行動に一定の影響を与える商品ランキングには、透明性と公正さが求められているといえよう。
(文=編集部)