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ベネッセ、大リストラは失敗する?深刻な会員減、人材流出懸念、無料&高品質の競合台頭

文=大坪和博/PLAN G 代表
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 これは、大学受験にかかわらず、高校の学習そのものを大きく変えるきっかけになる可能性がある。しばらくは試行錯誤が続くと見られるが、公立・私立に関係なく各々の学校独自での取り組みをしていくことは十分に考えられる。もちろん、試験の実施日が決定されれば、それに向けた対策授業を行うだろう。

 ここで難点となるのは、教科型の試験問題だけではなくて、「思考力・判断力・表現力」を評価する問題が出題されることだ。文科省の指導要領の案では、コミュニケーション重視の授業を増やし、自分の言葉で表現させるように導くことを求めているが、このような問題には、簡単に事前準備ができない。また、対面式でない教育方法では、この点の指導が難しい。そうなると、普段の学校内での教育・授業内容が大きな差となっていく可能性もある。知識を問うだけであれば、これまでの予備校・塾、通信教育や講座の動画配信などで対応できるだろうが、思考力・判断力・表現力となると、教師と生徒との直接対話をして培っていく「人間力」を鍛える必要がある。

 つまり、学校教育の担う領域が格段に広がるのだ。少子化が進む中で、入学希望者を集めたい中学や高校が、授業として人間力を鍛える授業や課外活動を充実させることは十分に考えられる。そのほうが通学する生徒にとっても、教育費を負担する親にしても、納得がいくものになるだろう。

●ベネッセの改革が教育産業の未来を占う

 また、ベネッセが成長分野と位置付けている介護事業への人材シフトもあり得るだろうが、教育産業との接点は少ない。このような分野へ強引な人材シフトが行われると、おそらく優秀な人材が流出するきっかけとなるだろう。

 このようにしてみると、人材シフトによる優秀な人材の流出、無料もしくは低価格でサービスを提供する競合企業などの出現、さらに学校教育や対面式授業での環境変化など懸案事由も多く、これらへの対策を立てなければ、ベネッセは沈みゆくことになる。すなわち今回の変革は、ベネッセの将来を左右する一因となることは間違いない。

 現段階では、どのようにベネッセが組織改革を行い、中核事業である進研ゼミのビジネスモデルとコンテンツの変革を行うのかは見えてこないが、6年後に迫った大学入試改革をきっかけとした教育産業の未来を映す鏡になるだろう。つまり、今回のリストラ策は単なる経営危機への対処というだけでなく、教育界の行く末に大きな影響を与える実験台の役割を果たすことになるといえる。
(文=大坪和博/PLAN G 代表)

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